Star Dust






 映画版ハリポタの前売り券がホグワーツの入学許可証の封筒だったことがあった。いや、前売り券なんて一度しか買ってないから、もしかしたらどの巻でも前売り券がああいう仕様だったのかもしれないけどね。まあそれは横に置いておいて、私の元にも来ました――キタんだよ、入学許可証が!

 可愛いクリクリおめめの森フクロウが窓サッシに止まったのに気付き駆け寄った。白い封筒を受け取り、その可愛子ちゃんの頭を撫でる。なんてキャワユいんだ! ジジイの元から来たとは思えないよ! スイートでスイーツでスマートだね! まあ羽毛の方が手触り良いけどね!

 振り返って、ソファーに座ってコーヒーを飲むセブに声をかける。


「セブ、入学許可証が来たよ!」

「当然だ」


 セブは鷹揚に頷いた。ソファに深く腰掛け、手の中のマグカップが凄く似合ってる。


「お前が入学できないレベルの学校なら、誰も入学できんだろう」


 それは褒め言葉と受け取って良いよね? 能力を認めてもらえてると判断しちゃいそうだ。どうせこれから毎年受け取ることになるので(指定教材の連絡とかで手紙が来るよね)、何の感慨もなくビリビリと開封する。


「なんか――この手紙、自筆って感じがプンプンするよ」


 魔法で量産された手紙、という感じがしない。私だけのためにわざわざ書いたっぽい。ハリーに来た手紙の差出人名はマクゴナガル先生じゃなかったっけ? なんでダンブルドアの名前が書いてあるんだろう。それにこれ、入学証明っていうよりも私信……。


「見せろ」


 セブは受け取ると眉根を寄せて(萌えるよ萌えるよ! 眉間の皺がエロティックっす!)、燃やした。


「校長には私から入学すると伝える。お前は教科書リストさえ持っていれば問題ない」

「アイサー」


 セブルスは転生前も現在も、私の萌えのターゲットだ。だけど今は、昔には考えられなかった親子のそれに似た関係を結んでいて。一緒にいて安心できるような間柄だ。恋愛対象ではないと思う。恋をすっ飛ばして愛になったというなら別だけどさ。


「でもセブ、私もうこの範囲終えてるよ?」


 一年のほとんど、セブは家にいない。暇だ。暇なら何をするか――勉強しかない。魔法薬学の研究と闇の魔術&その防衛術にしか興味がないセブが子供用のおもちゃを買おうと思い付くはずもなく、家にあるのは大人向けの参考書ばかりだった。年に数回ある一、二週間の休暇で持って帰ってくるお土産と言えばやはり参考書。七歳の頃にはダイアゴン横町に行く許可が出て暇つぶしの術も増えたけど、魔法界に来た醍醐味である魔法の勉強は私を魅了し続けた。――ストーカー、じゃなかった、熱狂的ファンの集中力はザラじゃないのよ。

 ついでに私はとっくに七年分の勉強を終えている。初めこそ未成年の魔法使用に関する制限を思って遠慮していた私だけど、七歳の誕生日にセブルスのゴーサインを貰ったから気にせず魔法少女になった。魔法少女って良い響きだよね。マスコットキャラクターが必要なら羽毛を推すけど、しゃべれないからなぁ。むろん屋敷しもべ妖精は却下の方向で。


「――七年間主席を取れ。取れないようなら勉強が足りなかったということだ」


 セブは顔を上げることなく言った。――つまり、もう終えた範囲だと言うなら証拠を見せろということか。うわあ、言わなきゃ良かったかも!


「私の娘だろう?」


 あんまり育ててもらった記憶ないけどね。てか、私は養子であって実子ではないんだが。もし仮にセブと私の間に恋が芽生えちゃったらどうする気だ。禁断の愛は別腹だよ美味しいよ! 学校で始まるセブと私の恋の予感!? えっ何それ美味しそう!


「はーい」


 私はのんきな返事をして、キッチンからココアを呼び寄せセブの正面に腰かけた。アクシオって暴力的な呼び寄せ呪文だと思うのは私だけじゃないと思う。気を付けなきゃ中身零れそうだ。


「レイノ」

「んー? なに?」

「期待している」


 セブの一言に頬がカッと熱くなる。私は何度も縦に頭を振って、機械みたいに「うん」と繰り返した。ねえダディ――私頑張るから、だから、きっと貴方を守らせてね。

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