うちの今生の名前はユリア。ユリア・カイザーリンクという。どこの世紀末覇王に誘拐される乙女かと突っ込んだけど、このネタを分かってくれる人はこの世界には一人もいーひん。ビジネススーツでヒーローなんてもんを始めたのはええけど、うちについたファンがなんとも残念な奴らばっかりで辟易している。

 「リック様、罵って!」とか「踏んで蹴って殴って、血だるまにして下さい!」とか「ああっ! リック様っ!」だのと身悶えしながら追いかけてくる男共に我が身の危険を確信したのは一度や二度じゃない。時には女の子もその集団にいるにはいるけど、うちにはドM集団に突っ込んでいくような趣味はないんや……。


「今日も大変だったな、リック!」

「そう言うんやったら助けてぇな」

「オレには無理だ!」

「ションベン垂れ流して死ね!」


 今日もまた、犯罪者に人誅を与えた後、Mの集団に追いかけ回された。笑いながらうちの肩を叩くバテリー先輩のジャックを蹴り上げれば、ヒーロースーツに覆われているとはいえ男の急所、バテリー先輩はこっちの心まで辛くなるような悲鳴を上げて悶絶した。それを見たクリアカッター先輩が顔を青ざめさせながら口を開く。


「リック、君は男じゃないからそんなことが平気でできるんだ。男がそこを蹴られるとまさに死活問題だということを分かってくれ」

「大丈夫ですって、バテリー先輩にこれからも彼女ができるとは思えませんし」

「それとこれは違うのさ……」


 クリアカッター先輩は悲しそうに顔を歪めた。


「どうせフランクフルターなんですから、今更フランクフルターがウィンナーになったところでそう変わりゃしませんって。ボロニアがウィンナーになるのはそりゃ可哀想かなー思いますけど」

「うん、君は女の子らしさをどこに置いてきちゃったのかな?」

「気がついたら捨ててました!」

「――リック。君が女の子好きだってことはよく分かっている。でも、だからといって、男をぞんざいに扱って良いということにはならないよ。こんな……金的なんて恐ろしい」

「違うんですよ、クリアカッター先輩。うちがバテリー先輩のジャクソン君を『ほぁた☆』したのにはきちんと理由があります。男だから無差別に攻撃しているわけないじゃないですか」


 ほら、クリアカッター先輩もレジェンド先輩も無事でしょう、と両腕を広げてアピールしてみる。


「せっかく男だというのに、男として終わっているから、うちはバテリー先輩を男のコンプレックスから解放してあげよ思たんです! うち、先輩想いの良い子でしょ!」

「うん、バテリーが男として終わっているのは私だって知っている! 女を見る目がないし下品だし頭も悪いし顔だってそんなに良くない。だが、股間を蹴るのとそれは全くの別問題なんだ! 男の勲章をなくしたらただでさえない男の甲斐性がさらになくなるだけ! バテリーが気色悪い女の子になるだけじゃないか!」

「二人とも、バテリーが可哀想なことになっているからそれ以上はやめてくれないか?」


 いつの間にかバテリー先輩のどうしようもない欠点について話していたうちらに、レジェンド先輩が声をかけた。言われてバテリー先輩を見下ろせば『どうせ、どうせ……頭も顔も悪いよ、チキショーめ。でもそんな風に言わなくっても良いじゃないか、どうせ下品でどうしようもない男ですよー』と転がっていた。股間はもうええんやろか。しゃがんで優しく声をかける。


「大丈夫でっせ、先輩。世の中にはブス専とかデブ専とかおるんやから、先輩を見て人目で恋に落ちるような奇特な人も世の中には必ず一人や二人はおるって」

「慰めるふりをしてかなり非情なことを言うね、リック」


 レジェンド先輩の声なんて聞こえへんもんね。HERO-TV地上班のマリアがロン毛を揺らしながらやってきたのに手をあげる。


「今回も素敵だったわ、リッキー! いつもながら惚れてしまいそう」

「何度でも惚れてくれてかまへんで、マリア……明日も明後日も、一年後も二年後も、十年後だって惚れなおさせてみせたる」


 右手を掬いあげて唇を押し当てれば、マリアは頬を染めた。


「今晩、空いてるわ。誰との約束もないの」

「ほなら一緒に天井のシミ数えよか」


 腰に腕を回して抱き寄せれば恥じらうマリア。レジェンド先輩は額を揉み、クリアカッター先輩は顔を赤くして視線を逸らしてる。ただバテリー先輩はうちとマリアのラブラブな様子を見て口を半開きにしてる。


「な、なな、なななな……何で! 何でマリアとリックが!? お前ら女同士だろ!?」

「愛に性別の壁はないねんで、バテリー先輩」

「一つ教えてあげるわ、バテリー。リッキーは……エキセントリックは貴方よりも頼りがいがあって、格好良くて、男らしいわ」

「マリア……」

「リッキー」


 そしてうちらはインド映画ならダンスと歌が始まるシーンに突入。カメラさんたちは辟易した様子でマリアとうちを見てた。後から聞いたところによると、撮影中ずっとうちののろけ話を聞かされていたのだとか。

 数日後、この公開キスシーンをとある雑誌社が記事にしてしもて、うちがレズビアンであるということは周知の事実になった。そのせいか追っかけに女の子が増えたんやけど、男の追っかけも経らへんせいで全体の数が膨れ上がった。うーん……うちはSやけど、人を虐めて性的興奮を得るわけやないんやけどなぁ。

 それを先輩らに言うたら、バテリー先輩を振り返った後、レジェンド先輩とクリアカッター先輩に『嘘こけ』と怒られた。わけわかめ。でもそのあとレジェンド先輩にクリアカッター先輩が「君も案外口が悪い」と言われとった。何がなんだか。
















 もしタイバニ主人公が女だったら、というリクエストを頂きました。下品ですすみません。かなりわかりにくいネタを2〜3挿入してみましたが、みなさまおわかりでしょうか? ついでに、ウィンナー・フランクフルター・ボロニアは全てヴルスト(ソーセージ)の種類です。ウィンナーは羊、フランクフルターは豚、ボロニアは牛です。どの順番が腸の直径が太いかはみなさんお分かりですよね!

 他には某有名漫画の題名とか、国家擬人化漫画の眉毛太い人の決め台詞とか。とく様、こんなのは嫌だと思われましたら、違うのを書きます。
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