祖国も故郷もなく


 どうやら私は念の才能があるらしい。クロロさんが楽しそうに言ってるのを聞いてふうんと聞き流したけど、ないよりはある方が良いしね。系統が何なのか分るのが楽しみかも!

 クロロさんに付いてもう何か月が過ぎただろう? 少なくとも半年は過ぎたかなって頃、クロロさん以外の人とも戦って経験を積もうということで天空闘技場に向かった。私、天空闘技場までしかハンターをちゃんと読んでないんだよね……ハンタハンターを読み始めてからあの夢を見るようになったからなんだか不気味に思えて読めなくなった。まさか自分が心霊体験するとは思わなかったし。


「その小さな体からどうやってあれほどの力が発揮されているのでしょうか、ユカリ選手! また勝ちました!」


 ゆっくり登っておいでと言われたから、念を使わずに腕力と脚力だけで地道に階を上がって行く。使っちゃ駄目とは言われてないけど経験値を積むならそっちの方が良いんだと思って。観客席を見回せばちょんまげの頭が見える。そっちに手を振ったら同じように振り返された。クロロさんは何か用事があるとかでいなくて、代わりにクロロさんのお友達だっていうノブナガさんに保護者として付いてもらってる。日本人だなーと思ってたら、こっちではジャポンだとか何だとかいう名前で存在してるらしい。……英語? スペイン語ではハポンって言うんだって聞いたことがあるから、英語とスペイン語の間を取ってフランス語あたりだろうか。何語かは知らないけど、ヨーロッパ系なんだろうな。

 フードが取れないように押さえながら廊下を走る。クロロさんが将来のために顔は隠してなさいって言ったから、良く分らないけどとりあえず顔を隠してる。タートルネックのシャツにぶかぶかのフード付きの上着を着れば不審人物の出来上がり。でも私以上の不審人物が天空闘技場にはこれでもかってくらいいるから、上手いくらいに埋没してる。

 ファイトマネーは何千万の桁を数えた。現金受け取りじゃなくてクロロの作ってくれた私の通帳に振り込んでくれるように頼んでるからいちいち受け取りに行く必要はなくてとっても便利だ。

 ノブナガさんと待ち合わせの約束をしてた中央扉前に着けば、オレンジジュースとコーヒーを持ったノブナガさんが売店のある方から歩いて来るところだった。


「ほいよ、オレンジジュースで良いんだよな?」

「うん!」


 子供になって味覚も子供のそれになったらしく、紅茶よりもジュースが良い。コーヒーは前から飲めないし。ストローに口を付けて飲めば、ぐしゃりと頭を撫でられた。フード取れそう。

 ノブナガさんの手から逃げて横に並べば、ノブナガさんは電光掲示板を見上げておやと目を見開いた。


「ヒソカが出やがるのか。相手はカストロ? スカトロみてーな名前だな。試合は三日後か……」


 ノブナガさんの言葉に含まれたヒソカという名前に、私も掲示板を見上げた。試合日は三日後の昼。もし、このヒソカさんと私が親戚だったとしたら、私が生きてるってお兄ちゃんに伝えられるかもしれない。パパとママも喜んでくれるだろうし。――自分が住んでる町の名前を覚えてないとか、八歳児じゃ仕方ないのかなぁ? 町から出ることなんてなかったし知る必要がなかったのもあるけど。


「ねえノブナガさん。私、ヒソカさんとカストロさんって人の試合、見たいな」

「あいつのか? お前も物好きだな。だが見といて損にゃならねーだろうし……仕方ねぇな。見に行くか」

「本当? やった! 有難うノブナガさん!」


 どうにかして接触しなくっちゃね! って、そういえばノブナガさんさっきヒソカさんと知り合いみたいな言い方してなかった……?


「ねえノブナガさん、ノブナガさんはヒソカさんと知り合いなの?」

「ん? ああ、仕事仲間だな。仲間っつーには抵抗があるが」

「ふーん」


 まあ、原作を読む限りあの性格だからね。いくら仕事上一緒になることが多くても慣れないというより慣れたくないんだろうな。私も慣れたくないし。怖いもんね。


「ンじゃあ適当に何か買って、適当な試合見て帰るか」

「はーい」


 ノブナガさんの提案に賛成して、チケットのいらない試合を観戦して帰った。














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12/14.2010(抜き取り式お題09)

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