誰が駒鳥を殺したの?


 観客席から空笑いが漏れる。どう見ても軟弱そうな体格の若い女が自身の五倍以上はあるだろう体重を吹き飛ばすんだから、そりゃあ笑いたくもなるだろう。審判は「29775番は五十階へ!」と平気そうな顔で言っているように見えて目が泳いでるし――。








「さあ本日はシャル選手対ユカリ選手! 双方ともこれまで連戦連勝の超有望株ですッ! 勝利の女神は果たしてどちらに微笑むのか!?」


 私は生活資金を得るために天空闘技場にやってきたクチの一人だから、五日目で百五十階まで来てしまったのはちょっとやばい。そろそろ負けないと二百階に到達してしまうこと間違いなし。


「って、シャル? シャルナーク……まさかね。こんな場所でうろついてるはずないよね」


 天下の幻影旅団がこんな場所で遊ぶことなんて――あるのかなぁ。お願い、シャルナークじゃありませんように、童顔マッチョじゃありませんように!

 審判の合図で舞台上に上り、膝から崩れ落ちそうになった。童顔で金髪で王子様みたいな顔をしているくせにムキムキマッチョなシャルだった。これって何フラグ? 幻影旅団に入れよ☆ フラグ? 私としては原作組と一緒に冒険の旅に出るのが一番「命だけは」安全だって知ってるから、なるべく原作組と一緒に行動しようと思ってたのに!


「良い試合にしようね!」

「ソーデスネ……」


 差し出された手に内心挙動不審になる。操るつもりだろうか? 手に硬をして握り返す。手の中を何か細くて冷たいものが滑るのを感じた。さ、最低だ! 念でかなり強いくせに、素人の私に対してそこまでするの!?


「では、始めっ!」


 三歩離れて立った私たちを見て、審判は合図の声を上げた。それに従って飛び掛かる。向こうは背中の側を見ることもなく――まあ舞台上だから障害物なんてないんだけど――後ろ向きに駆け、私がそれに追い縋る。右足にオーラを集め、爆発させて推進力を得る。殴り掛かれば数ミリの差で避けられ、代わりにアッパーが体を捩じる勢いを乗せて向かってきた。食らう。

 その代わりにそのアッパーを繰り出した左腕を抱き込み、抱き潰す。骨が折れる音が響き、シャルナークは少し顔をしかめた。


「元からそれを狙ってたの?」

「そんなわけないでしょう」


 一方的な戦いになることは日よりも明らかだったから、脳を揺らされること覚悟でアッパーを食らったのだ。目論見は成功して、そのおかげでシャルナークの腕はこの試合の間はもう使い物にならないだろう。そうなるよう複雑に折ったんだし。


「ふーん。まあ良いよ」


 そしてそのあと、シャルナークに吹き飛ばされた。














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2011.10/21(選択式お題01)

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