永遠を誓う一瞬


 ノブナガさんと焼肉食べたけど、ノブナガさんがガバガバとビールを飲みながら焼酎を出せとか熱燗が飲みたいとか叫んだせいで店員さんに怒られた。ここの日本、じゃなかったジャポンは日本とそっくりなんだろうな。作者さんが日本人だしね。

 やけ酒だ俺はまだ飲み足りねーんだとノブナガさんが酒屋へ走り、引きずられた私はどうしてか店を出る時には一升瓶を六本抱えてた。ノブナガさんは倍どころか五倍以上の瓶を持ってたけど。


「うう、頭痛い……」


 酔っ払いって何でこんなに迷惑なんだろ? お前も付き合え、友達だろ、とか言われて無理矢理瓶の半分ほど飲まされたけどあんまり美味しいとは思えなかった。成長しきってない体には比較的少量のアルコールもきついみたいで、頭がくらくらする。――いや、部屋に充満したお酒の匂いのせいか。

 よったよったと窓に寄って三つある窓を開放する。吹き込んできた風がお酒の匂いを吹き飛ばしてくれたのかちょっとだけ頭痛もマシになった。……一体どんだけお酒臭かったんだろうか、この部屋。箪笥に出さずにトランクの中に詰めたままの着替えを取り出して、ゆったりした紺の地に黄色とオレンジの流れ星のシャツとクリーム色の七分丈のズボンを選ぶ。星のマークが好きなんだよね。キッチンの流しで顔を洗ってやっと目が覚めた。


「ご飯は――やっぱりセットしてないかぁ。仕方ない、冷やご飯にしよ……」


 毎晩炊飯ジャーに炊飯予約しておいてるんだけど、お酒で倒れるようにして寝た私が出来るはずがない。ノブナガさんがしてくれるわけもない。今日はお茶漬けかな。ため息が自然と零れる。焼き肉は美味しかったけどお酒は全然嬉しくない。

 薬缶にお湯を沸かしてシャケフレークとワサビを取り出して、お茶っぱ、急須、だしの素と用意していく。あられはないから諦めるとして、ノリは――焼きノリを千切って浮かべれば良いか。ゴマと醤油も出す。醤油は隠し味にするだけだから本当にちょっとで良い。

 冷やご飯を大きめのお茶碗に盛ってワサビ、ノリ、ゴマ、シャケフレークを乗っける。あとはお湯が沸くのを待てば良いからその間にノブナガさんを起こそう。起きるかどうか分んないけど。


「ノブナガさーん、ノブナガさ……うっ!!」


 ノブナガさんを探してみれば寝室とトイレの間の廊下で一升瓶を抱きしめて寝てた。栓抜きを使うのが面倒だったのか瓶は首が半分くらいに短くなってて、先端が鋭利だけど怪我しやしないんだろうかと不安になる。


「ノブナガさん、起きて! ご飯だよ!」

「んー、うん」


 起きない……。ゆっさゆっさと揺すってみたけど起きる気配は全くなくて、仕方ないから瓶だけ取って、毛布を掛けてあげることにした。うん、床は自分の体温でもう十分暖かいだろうし、細かいことは気にしないに限るね。

 薬缶がピーって笛を鳴らしたから急いでキッチンに戻る。急須の中にだしの元とお茶っ葉とを入れてお湯を注いだ。しばらく急須を手の中でくるくると回してから茶碗と急須を持って居間に戻る。茶碗にだしとお茶の混合液をかけて出来上がり。お好みで醤油をかけても良い。

 レンゲで硬いご飯をほぐしながら食べる。うーん、美味しい。実はこれを作るのはまだ二度目なんだけど、どうやら作り方は間違ってなかったみたい。

 まぐまぐと食べてる内にだいぶお酒の匂いも消えたみたいだから窓を閉めてく。開けっぱなしだと寒いし。茶碗は流しに置いておいて――さて、何しよう? 昨日の酒気が残ってるかもしれない中試合をする気にはなれないし、でもだからって言って外に出る気にもなれないし。今日一日は部屋でごろごろしてようかな。

 なんとなしに時計を見たらもう十時過ぎだった。いつもは七時くらいに起きてるのに、きっとお酒のせいだ。テーブルに戻ってべしゃりと突っ伏す。食べてすぐ寝たら牛になる、牛になる……でも眠いなぁ。テーブルにスリスリしながらただ時間を潰してたら――チャイムが鳴った。誰だろう……私の部屋に来るような人なんて覚えないし、もし私をライバル視してる人がいたとしても殺気がするだろうからノブナガさんが起きてくるはずだし。もしかしてクロロさんかな? でも明日帰ってくるって言ってたけど。繰り上げとか?


「はーい、ちょっと待ってくださいねーっ」


 慌てて椅子から飛び降りて扉に走った。って言っても十メートルもないけど。


「はいはい、どなたですかー?」


 扉を開けたそこに立っていたのは、クロロさんじゃなかった。

 立っていたのは、お母さんにそっくりな顔をした男の人。


「ユカリ」


 あれ、ヒソカさんよりもお母さんに似てる? いやでもアレ化粧してるから元の顔とちょっと違うだろうし。化粧してても似てるって思ったくらいだから化粧してなかったらもっと似てるかもしれないし――もしかして、この人……ヒソカさん?


「お帰り、ユカリ……!」


 泣きそうな顔のヒソカさんに、心のどこかが歓声を上げた。














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12/16.2010(抜き取り式お題03)

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