ちょっと一杯のつもりで呑んで


 オレは――ちょっと一杯ひっかけるだけのつもりだったんだけどな。


「シャルナークなにをしている」


 クロロが絡み酒だってことは古参の団員なら皆知ってる。だからクロロと飲むつもりなんて全くなかった。だって酔ったクロロってば本当に性質悪いんだから。


「ん、ちょっと考えごとしてただけだよ」

「全く、プリン神様に対して失礼な奴だ」


 誰もいないと思って酒を飲みに来た食堂で、まさかクロロが先に酒を飲んでたとは思いもしなかった。――十分前のオレ、今すぐ部屋に引き返して!

 クロロはいくら酒を飲んでも赤くならないくせして、たった一升瓶一本で他人に絡みだすから迷惑極まりない。ビール樽三樽飲んでも二日酔いにならないザル――いや、枠だっていうのに、酔いが回るのは早いんだからなぁ……本当に止めて欲しいよ。

 それで、クロロが今何をしてるかって言うとプリンに祈りを捧げてる。それも一個で二十人分はありそうなバケツプリンで、大皿にプリンを盛った時には恍惚とした表情で「ああ……!」とか言ってるもんだから本当にもう始末に負えない。オレ、部屋に帰りたい。

 五分近い祈りをすませると、クロロはスプーン――それも小さいのじゃなくてカレーとかを食べる時用の大きいスプーン――でプリンを掬って食べた。相好が崩れ、元々童顔なのがもっと年下に見える。


「……クロロ、将来の夢は?」


 だいぶ前にフィンクスが聞いた質問を再び聞いてみた。


「プリン職人」


 ――天下の幻影旅団、その団長ともあろう男が「将来はプリン職人になりたい」だのと言っている。その、確認したくなかった事実に、オレは泣きたくなった。







 ああ、本当に。酒なんか飲みに来なけりゃよかった。












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 いろんな意味で壊れたクロロ。こういうクロロも可愛いと思います まる
08/20.2010




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