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か:風が強く吹き荒れ始めた。地を這うような唸り声にも似た音を轟かせて。 き:木々が揺れる。風に煽られ、やって来た雲が空を覆い隠し、ひたひたと最初は足音を響かせるように、そして段々と地面に叩き付けるような響きで雨が轟音となって降りつける。 そんな中で、立ち竦んだ小さな彼の頬には泣いているかのように、雫が絶え間無く伝っていた。 く:「……苦しいのか」 びしょ濡れの彼に問い掛ける。されど返事はない。傘をそっと差しても、反応は、ない。彼の心は彼女の死と共に死んだのか、それはまだ分からない。 け:けれど、彼女はそれを望んではいまい。彼女は彼が生きる事を望み、誰よりも彼の幸せを祈っていた。それを死に逝く彼女は言葉にはしなかったけれど。 こ:「こうしてると、」 彼が口を開いた。その声はまだ死んではいないらしい。良かった。 「こうしてると、アイツがひょっこりやって来て」 ────何してるの、 。風邪引くよ。 「って、言いそうな気がするんだ」 そう言って彼は笑った。その笑みは親と逸れて迷子になった幼子のように、暗闇に続く目の道を見て途方に暮れた旅人のようだった。 「アイツは、──もういねェのに……」
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