「当たり前でしょ!私はその為に来たんだから…!」
ぎゅっと拳を握りしめて青年を見つめ返す。その答えにくすりと目を少し細めて、面白いものを見つけたとでもいうかのように笑みを浮かべた。
「注意はしたからな?」
セレーネは青年の言葉の真意が分からなかった。だが、突然目を覚ましたかのように緊張した面持ちで青年に尋ねる。
「もしかして…あなたが犯人?」
その言葉に青年は口元は笑っているものの目を丸くする。どうやらセレーネの言葉の意味を理解していないのだろう。
それを察してセレーネはまた尋ねた。
「誘拐犯…じゃないの?」
彼は少し考えてから口を開く。
「誰かを誘拐した覚えはない」
その言葉にセレーネはホッと胸を撫で下ろす。そんなセレーネを見てから「だけど」と言葉を続けた。
「もし仮に俺がその犯人だとして、今お前に本当のことを言うと思うか?
それに…もしそうならお前は俺をどうする気?」
くすくすと意地悪な笑みを浮かべて見つめる青年にセレーネは苛立ちを覚える。
それに気付いたのか、青年はにんまりと笑いながら再び口を開いた。
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