セレーネはその扉に近付きそっと中を覗いた。だが中にも誰もおらず、開かれた部屋があるだけだった。
その天井はとても高く、吹きさらしにされた上の廊下とその手刷りが見える。だが階段が見当たらない。どこか違うところに上に続く階段があるのだろうか。
キョロキョロ辺りを見渡すものの、違うところに続く扉がいくつかあるだけで人影はない。
「ここ、ホントに孤児院の地下なの?」
地下というには可笑しいくらいの高い天井と、今まで歩いて来た場所を含めたその広さ。セレーネがそう思うのも無理はなかった。
(私たちが入れない場所が多いだけであの建物も広いのかな)
首を少し傾けながら真剣に考える。
その時―――
「何してるの?」
突然聞こえた声に辺りを見回す。だが何処にも人影はない。
その様子を見て、少し可笑しそうに声の主は再び口を開いた。
「違う、こっち。上」
その言葉につられてセレーネも顔をあげ上の吹きさらしにされた廊下を見る。
するとそこには一人の青年がいた。
その容姿に思わず目がそらせず胸が高鳴るのが分かった。
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