(もし相手が刃物とか銃を持っていたらどうしよう…)

やはりルイを待っていた方が良かっただろうか。
一瞬そんなことを考えて来た道を振り返る。だが、人が来る気配はなく、しんと静まり返っていた。


(相手が人間ならまだいい。もし…吸血鬼だったら?)

ふと浮かんだ疑問に鳥肌が立つ。だが慌てて首を左右に振り前を向き直し、足を進めた。


(…ルイたちを待ってたら見失っちゃうかもしれないから進まなきゃ)

地下はそこまで広くないだろう。だけれどもきっとどこからか外へと通じる道があって、そこから入り込んでいるのだと、セレーネは考えていた。


ふと蝋燭で照らされている壁を見る。そこには何か赤黒い掠れた文字とその文字を囲むように円が描かれていた。
向かい合わせにある反対の壁にも同じようなものが描かれている。



(何だろう…)

だが見たことのない文字で書かれているため、読むことができない。

気にはなったものの特に深く考えず、足を踏み入れた。

その瞬間―――





「なに…この臭い…」

さっきまで全然しなかった生臭い空気が突然彼女を包み、思わず鼻と口に手を当てる。










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