その時―――
―――――コツン
暗闇の向こうから小さな音が聞こえた気がした。セレーネは息を潜めて耳に神経を注ぎ、その音に集中する。
―――コツン、コツン
(…足音?)
それは誰かが歩いている音に聞こえた。
(やっぱり中に誰かいる!)
セレーネは慌ててルイが出ていったドアの方を見るが、まだ来る様子はない。
ドアと扉を交互に見ているうちに、次第に足音は小さくなっていく。
(見失っちゃう!)
「ごめんなさい」と小さく呟いてからセレーネは、急いで開かずの扉の中に足を踏み入れ階段に立った。
やはり、緩やかな螺旋を描いているのか、回りながらどんどん下へと降りていく。
そうしているうちに、セレーネの姿は闇の中に溶けて消えていった。
← →
[栞を挟む]