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「……まじかよ」
ルイは目の前の光景に絶句した。
開くことのなかったそれは、幼い子供の好奇心を掻き立てるには十分で、中は異世界へ通じてるだの、地下があって化け物が住み着いてるだの、お宝が隠されてるだの、様々な噂が飛び交い「もし開いたら」と想像をしたことは何度もあった。だけれども、当然それが実現することは今まで一度もなかった。
だから月日を重ねるうちに、“飾り”だと思い込んでいた。否、どこかでこの扉の存在を恐れていたのかもしれない。
それが今、目の前で口を開けて暗い地下へ導いていたのだ。
目の前に起こっている状況に、ルイは言葉を失って呆然とそれを見ている以外何も出来なかった。
「この中にいる気がするの」
その言葉にルイは、声の主であるセレーネに目を移してから再び開かれた扉に目を移す。
蝋燭は風で揺らめき、ほのかに下へと続く階段を照らす。だが蝋燭の光よりも明らかに闇が勝っていた。
ルイにはそれが闇の世界へと続く道にしか見えなかった。
『行ったらもう二度と
戻れない』
頭の中で誰かが囁く声がする。ひやり、と冷や汗が背中を伝うのを感じた。
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