頭の中がぐらりと揺れた気がした。胸のざわめきは一向に良くならなくて、寧ろギュッと胸を掴んで放そうとしない。
視線を下に向けてから今度はルイが口を開く。
「レベッカわかるだろ?赤毛で大人しい子。あの子がいなくなったんだ」
レベッカ。綺麗な赤い髪の毛をして、本が大好きな女の子。恥ずかしがりやでいつも私の後ろに隠れてた。
その子が消えた?恥ずかしがりやで甘えん坊で泣き虫で…なんだか放っておけない、あの子が?
ぐるぐると駆け巡るのは、いつも自分の後ろに隠れていた、レベッカと呼ばれる小さな赤毛の女の子のことだった。
「警察にも電話したんだけど…この雨だから来るのが遅れてて」
神父の声が頭に響く。だが自分がその声を聞いて、話を本当に理解しているのかが分からなかった。
そんな様子のセレーネを見て、気遣うようにルイは口を開く。
「まぁ、俺たちを脅かそうと隠れているだけかもしれないし…そんな考えるなよ」
《俺たちを脅かそうと隠れている?》
セレーネはルイの言葉を頭の中で否定した。
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