ガチャリと客間の扉を開けると、ソファに向かい合わせに座っている神父とルイが、ハッとしたかのようにこちらを向いた。その二人の視線に思わず身体が固まる。
神父とルイは、来たのがセレーネだと理解してから、にこりと笑顔を向けた。
「どうしたのセレーネ?」
いつも通りの優しい口調で話す神父に安心して、セレーネは強ばった身体の力を抜いた。
「あ、いや、ルイが帰ったかが気になって」
セレーネはチラリと視線をルイに移す。ルイは視線をセレーネから窓の方に向けて口を開いた。
「帰ろうとしたら突然雨が降ってきて帰れなくなっちゃったんだよ」
苦笑いを浮かべて「参ったよ」と呟きながら頭を掻いた。
だがその後にしばらく沈黙が続く。セレーネは先ほどの二人の反応が気になっていた。聞いてはいけない、と、どこかでは思ってたのにも関わらず、知りたいという欲求には敵わなくてぽつりと呟いた。
「あの…何かあったの?」
口にしてから胸がざわめき後悔する。ルイはばつが悪そうに眉間にしわを寄せてから、神父に視線を移す。
神父は一瞬困った、とでもいうような表情をして、少し考えたが諦めたかのように口を開いた。
「…また一人、いなくなったんだ」
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