――ヒヤリ

突然冷たい空気がセレーネの身体を包み、身体がぶるりと震える。セレーネはイスに掛かっていたカーディガンを、着ているネグリジェの上に羽織ってから窓の側に近寄りカーテンを開けた。
目に映ったのは空から激しく地面に叩き付けられている大粒の雨だった。


「うそ、酷い雨…」

耳を澄ませば遠くの空からゴロゴロと不機嫌そうに鳴り響く雷の音が聞こえる。
しかし肝心なのは、この大雨がいつから降っているのかということだ。降りだした瞬間、眠っていたのでセレーネは思い出すことが出来ない。
ルイが住む街までは馬車でも3時間は余裕でかかってしまう。無事に辿り着くことが出来たのだろうか。

でももしかすると出発する前に降りだしたかもしれない。もしそうなら、この雨だからきっとまだ出発出来ていないだろう。
セレーネは急いで部屋の扉を開け廊下に飛び出した。

昔は蝋燭や月明かりのみで薄暗かった廊下は、今ではお金は少しかかるが数個のランプの電気を付けっぱなしにしており、大分明るくなった。セレーネはそんな廊下のギィギィと軋む床を気にすることなく客間に使われる部屋へと向かった。










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