セレーネは昔から体が弱く、薬を飲まなければ発作や高熱が出てしまう為、父は母の看病に中々専念できないということを知っている。
もう少し丈夫で元気ないい子だったなら、お父さんもお母さんの病気を治すことだけを考えていられるのに。
セレーネは薬を飲む度にぎゅっと目を瞑り、その苦さや毎度来る副作用に耐える。
早く自分が体を強くすれば、きっと植物状態になっている母も目が覚める、と信じて。
「…うっ……げほげほっ」
目を強く閉じて咳き込むセレーネの背中をルイは優しく叩き、落ち着かせて呼吸を安定させる。
「…ありがとう、ルイ」
セレーネの言葉にルイはにこっと白い歯を覗かせて笑った。
「でも何でルイここに?」
不思議そうに目を丸くするセレーネにルイは「あぁ」と小さく呟く。
「バイトで給料出たから少し神父さんに」
「確か…警察官目指して勉強してるんだっけ?」
セレーネの言葉に照れたようにルイは頭をかきながら「ん」と生返事を返した。
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