セレーネは先ほどの事を神父に話す。だが神父は見なかった、とだけ答えた。
その言葉に酷く不安そうな表情をセレーネは浮かべる。


「大丈夫だよ、もう部屋に戻ってるかもしれないし

もうすぐ夜が明ける
今夜はもう寝なさい」

そう言ってセレーネに毛布をかける。だがそんな神父の服の裾を掴み祈るように口を開いた。


「朝になってもセイラいなかったら?」

不安そうに見つめるセレーネの頭を撫で


「そしたら一緒に、困った迷子さんを迎えにいこう」

優しくおでこにキスをする。それに安心してセレーネは目を閉じようとした。

その時、ふと目の端に“開かずの扉”が入る。
扉は、先ほど確かに開いていたのに、素知らぬ顔をして、まるで閉まっているのが当たり前、とでもいうかのように閉じられていた。


「扉、閉め…たの…?」

薄れていく意識を必死で保とうとするも、眠気に勝てず目蓋は自然と閉じていき、最後まで言えたか分からない程言葉は空気に溶けて消えていった。






「?…開けてないよ?」



セレーネの言葉に不思議そうな顔をして神父は扉に目を移す。
だがその言葉はセレーネの耳には届かなかった。












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