ふと瞳に何かが映る。
そこには縁を金色に彫られた古い大きな扉があり、開かれていた。
何度もこの扉を見たことはある。だがいつもはその存在感を露にしつつも当たり前のように静かに閉じられ、そこに佇んでいた。
今までも開いたことはなかったし、これからも開かないものだと思っていた。
その扉の中に何があるのかを聞いたことは何度もある。だが教えてもらったことは一度もなかった。
好奇心からその扉に近付き中を覗く。中は壁に蝋燭が掛かっているものの薄暗く、下に伸びるコンクリートの階段が続いていた。下を覗くが静寂と暗闇が広がるばかりで何も見えない。
―――ヒュゥゥゥ…
風が通り抜け蝋燭の火が揺れる。
――――何処かに誰も知らない地下への道があって…そこには吸血鬼が眠ってるんだって!
ふとルイの言葉を思い出して寒気を感じ、急いで扉から離れた。
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