ギィギィ―――――ギィ
ギィギィ―――――ギィ
床の軋む音はする。何かがいる気配はする。だが暗くて姿を見ることはかなわない。何処にいるのかもわからない。
何かがいるのは、確実なのに。
怖くて足を止められない。
セイラかもしれない
そうは思うがやはり足を止めることが出来なかった。
歩いていくにつれて段々と音が大きくなりハッキリとしてきた。足音の主はきっとすぐ側まで来ている。
それが更に足を速くさせた。
ふと顔を上げると、神父さんの寝室のドアが少し開いていた。そこから溢れた光が廊下をぼんやりと照らし、まるでそこだけが別世界のように見える。
その明るさにホッと心が安らぐのを感じる。
寂れて古くなり、この修道院にも教会にもあまり人が来なくなってしまった。
だが、今のままじゃ神様が寂しいだろうからって言って、数年前にここを孤児院にして親のいない子や、親に捨てられた子供たちを引き取った優しい神父さん。
あたしの、お父さん。
すがるようにその部屋のドアに手をかけ中にいる人を探す。
だがそこにも人影はなかった。
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