※遙凛
※岩鳶鮫柄合同練習


「リレーのチーム分けだが、今回は学校関係なく組んでもいいことにするぞ」

 練習が始まって一時間がたつ。凛のお腹は限界に達しようとしていた。
 岩鳶と鮫柄の水泳部部員全員の前に立ち説明する御子柴の声は、最早彼にはきこえていない。

 ーくっそ、朝メシ食うべきだった。

 諸事情で朝食を抜いた凛のお腹は、空腹を強く訴えている。ぐううと音が鳴りそうになる度に、歯を食い縛り、お腹をさすって、鳴らないようにつとめた。はたして効果があるのかはわからないけれど。

 ーもう駄目だ。静まれ俺の腹、頼むから。ここで鳴ったらハルたちにもきこえちまう。

 経験から、あと少しの時間で音をたてるだろうとわかって、凛は早くも顔を赤く染めた。

 ー鳴る、鳴るな、なるな。

 ついにお腹が鳴ったとき、同時に、ばしゃんと音がして水飛沫が舞う。御子柴の話が続くなか、遙がひとりプールへと飛び込んだのだった。
 その音にかきけされて、お腹の虫の合唱など、誰にもわからなかった。

 ー助かった。

 遙が凛の状態を気づかってそのような行動に出たのか、それともただの気まぐれなのか。遙だけが知ることである。



(20131108)


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