※七話から捏造
※凛+遙


「俺はっ…おまえに勝った」

 唇を噛みしめ、拳を固く握り下を向いた凛に、遙は"そうだな"とだけ返した。

「どうして…。勝ったのにどうして…」

 凛は、遙に勝てればきっと満たされると信じていた。オリンピックという自身の夢を、何者にも囚われることなく追っていけると思っていた。
 実際、そうじゃなかった。凛は今もどこか満たされずにいる。自分が他人であるかのように、凛には自分がわからない。

「勝っても負けても泣くんだな」

 遙の言葉に目をこすると、涙がこぼれた。

ーーなにが悲しいんだよ、俺は。…俺はハルになにを望んでたんだ。なにがしたかった?

 なにもわからないのに、凛の涙はとまらない。
 遙は黙って、ただただ凛をみつめていた。


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