※翔春未満 ※春歌の過去構造有 私は小学生と中学生の時、所謂いじめられっ子という奴だった。 作曲が大好きな私は早乙女学園を受験し、受かることができたけど嬉しさより不安が勝っていた。 またいじめられはしないだろうか?友達はできるだろうか? そんな臆病な私は入学して何日かはほとんど誰とも話すらしないで過ごした。 話しかける勇気がない自分自身に何より腹がたち、落ち込む私に、ある日声をかけてくれたのは帽子とヘアピンの似合う小さく可愛い男の子だった。 「お前は今から俺様の家来だ」 初めてきいた声は外見の通り可愛らしいけど確かに男の子のものだった。 家来というのに最初はびっくりしたものの、話しかけてくれたことが嬉しくてしかたなくて、何度も大きく頷く。 「うんっ」 そんな私に彼は酷く驚いた様に目を丸くした。 「いいのか?…その、家来で…………?」 「うん!」 返事をきくと、男の子がニコッと笑う。 「お前、面白れぇ。…あの、さ。……これからは俺様が一緒にいてやるから」 その言葉をきいてハッとした。彼は気付いてくれていたんだ、寂しそうな私に。家来なんて言うけど、これは優しさ、気遣いなのだ。それが嬉しくて堪らなくて泣きながらお礼を言った。 「ありがとう」 いきなり泣いてしまう私に彼は戸惑っていたけど、泣き止むまで側にいてくれて、名前を教えてくれた。 「…翔君」 初めて呼んだ彼の名前は心の中に綺麗に響いた。 それから仲よくなって、翔君の友達とも仲よくなれて、昔の私には考えられないような毎日を楽しく過ごせている。 翔君のおかげだ。彼にはとても感謝している。 今は隣を歩く彼に、 「翔君、いつもありがとう」 そう言って私が笑えば、 「ばーか。お互い様だよ。…俺こそ感謝してる。春歌、いつもありがとな」 翔君も笑った。 top |