コインと3つの願いと
「 もし このコインで3つの願いが叶うとしたら どうする? 」
「 叶う訳ないじゃない シルヴィア 」
「 もし だよ 」
唐突に思い付いたことをペトラに話してみた
それは 机の上にある至って普通の銀色のコインで3つの願いを叶えられるという 少し馬鹿げた話である
「 そうね… 私なら、巨人が居なくなりますようにとか、オルオが兵長の真似を止めますようにとか あとは… とりあえず 長く生きられますように かな 」
「 そっか 私は うーん… 」
私のお願いってなんだろう
考えたことも無かったからな
「 シルヴィア? 」
「 思い付かないや… 」
「 そう でも まぁもし なんだから コインで叶っちゃうなんて有り得ないし そんなに深く考えなくても良いんじゃない? 」
ペトラはそう言った
そうだよね 願いが簡単に叶うなんて あるはずない
でも あの時 言っておけば、みんなは死ななかったんじゃないかって 思うことが
ある
『 みんなとずっと一緒に居られますように 』
私の同期で仲間でお姉さんで、世話好きで、優しくて 笑顔が綺麗
兵長の真似ばっかりで、いっつも噛んで、口煩くて、でも結構頼りになる
良いお兄さんで私の頭を優しく撫でてくれて、お前はずっと笑顔でいろと言ってくれた
面白い話をして笑わせてくれて、困ってたら助けてくれて、しょうがねぇって言いながらも一緒に訓練に付き合ってくれた
『 巨人が居なくなって 平和に暮らせますように 』
そうすればみんなと世間話とか 下らない話をして笑っていられたのに
私は怪我をして壁外調査に行くことが出来なかった
みんなが帰ってくるのを待っていた
けれど、帰ってきた兵長は ペトラや他の仲間達をキョロキョロと探している私に告げたのだ
「 あいつらは 女型にやられた 」
「 そ…んな、 嘘でしょう? …兵長 」
「 嘘じゃない 本当の事だ 」
何も言えなくなった私に すまなかった と兵長は言って去っていった
ポロポロと涙を流しながら 私は ペトラとした3つの願いを叶えることのできるコインの話を思いだしていた
神様 、 叶うならば
『 あの日々を 穏やかだった日々を 返して下さい 』
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