サバの兄ちゃん さてさて 本題だが やつ …ハルちゃんとやらが「サバの兄ちゃん」と呼ばれ始めた時のことをお話しよう 退屈なので散歩をしながら話すことにする(人間観察も中々楽しいものであるが)
やつが最初に「鮮魚イワトビ」にやって来たのは
…いつだったかは忘れた
あの日は、ご主人が売上を帳簿に記録しており僕はご主人の膝の上でそれをみていた ご主人はある一点を見てびっくりしていた そこには
『 サバ 今週 20 先週 9 』
売上が昨日より上がっているではないか 僕はご主人がさばを読んでいるのではないかと思った サバだけに…
ご主人は帳簿の前のページを捲った
『 サバ 今週 8 先週9』
サバがなぜこんなに売れているのだろうか
「 一体どういうことなのかねぇ ルル 」
「 にゃあ〜 (さあね) 」
僕は一鳴きしてご主人に答えた
その次の日 売上がなぜ上がったのかを知ることになる
「 …すいません サバをください 」
「 いらっしゃいっ!! いくつだい? 」
「 開いたのを2匹とそのままのを3匹 ください 」
「 サバだけ? 」
「 はい 」
サバだけを買い求める客は珍しいし初めてだったので ご主人は唖然としていた
「 …もしかして ここ最近のサバの売上は… 」
「 …? 」
ご主人がぶつぶつと言っているのでハルちゃんは?マークを浮かべていた
「 にゃあん 」
僕はハルちゃんに擦り寄る するとしゃがみ込んできて僕の頭を撫でた
「 兄ちゃんは、サバ好きなのかい? 」
「 …まぁ 」
「 そうかい、そうかい いやぁ 珍しいねぇ 」
ご主人は驚きながらもそう答えた
「 あの… この猫の名前は 」 そんなご主人を気にすることなくハルちゃんは僕の名前を聞いた
「 そいつはルルって言うんだ 可愛いだろ? 」
名前を聞くと、「…ルル」と小さく呟いてまた頭を撫でた
「 ほらっ サバの兄ちゃん 」 「 ? 」
サバを袋に入れご主人がハルちゃんに渡す時に、そうご主人が言うとまた?マークを浮かべた 「 にゃあ (気にするな) 」
僕はそう言うつもりで鳴きながらハルちゃんの頬を引っ掻かないように肉球でぷにッと触った
ご主人は変なあだ名を付けることがたまにあるのだから
「 …ありがとうございました 」
ハルちゃんは抱っこしていた僕をおろしご主人にそう言うとぺこりと一礼した
「 おうっ!! また来なよ サバの兄ちゃん 次はサービス券が使えるからな 」
「 …はい 」
元気が取り柄なご主人は大きな声でそうハルちゃんを見送りながら言った
これが、やつが …ハルちゃんが「サバの兄ちゃん」と呼ばれるようになった時の話だ
そろそろ「鮮魚イワトビ」に戻るとしようか 猫は勝手気まま、自由気ままではあるけど 僕は「鮮魚イワトビ」の看板猫 そんなに暇じゃない
何? じゃあ、何で散歩してるのかって?
そりゃあ お客探しさ
「 まぁ ルルちゃん 」
ほら来た
「 イワトビさんに行かないとねぇ 」
「 にゃあん 」
僕は招き猫だって言ったじゃないか
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