奴が来た
サバをまた買いにきたらしい
よく飽きないものだと僕は思う この間、散歩をした時に、巷ではサバカレーなるものが一部の人間の間で人気らしいと僕のこの可愛い小耳に挟んだ まぁ僕は猫だから刺激物は口にすることができないし、そのサバカレーがどんな味なのかとかそういうのはどうでもよいのだ
「 よおっ!! サバの兄ちゃん いつものかい? 」
うちのご主人は元気が取り柄だ
「 ……はい 」
それにしてもこいつは感情に起伏がないのだろうか 無表情に近いその顔は非常に頂けない
「 にゃあ 」
これでも僕は看板猫 この「鮮魚イワトビ」をご贔屓にしているお客には媚を売らなければ 足に擦り寄りにゃあと鳴く 猫だから「にゃあ」が当たり前だ
すると奴は僕の頭を撫でて少しだけ微笑むのだ
これを人間の いや腐女子の言う ギャップ萌え というやつなのだろう 僕は男だから萌えはしないが 優しく撫でる奴の手は気持ちが良い 時々買い物にやって来る明るい赤髪の女の子が僕を撫でる時よりも僕は奴の方が好きだ 一応言っておくが、僕が好きなのは奴の僕を撫でる手であって奴ではないので悪しからず
「 はいよ 兄ちゃん 今日は負けといてサバをもう二匹だ 」
「 …ありがとうございます」
ご主人は気前が良いのも取り柄である
袋に入ったサバを奴は受けとると僕をまた撫でて 小さく 「…またな」 と言い ご主人に一礼して帰っていった
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