最終兵器
「 シンッ!? 」
今日もシンドリアの王宮に政務官であるジャーファルの声が響く 仕事を投げ出す自分の主にジャーファルの胃はキリキリと痛む
「 兄さん? 」
丁度そこにやって来た妹のルカーナはジャーファルの様子を見てそう言った 内心は、またシン王が仕事ほっぽって逃げたんだなと思っていた
「 ルカーナ …シンを探して下さい 」
「 了解 」
この流れは毎度の事なので二人は対応に慣れていた 本当は慣れてはいけない気がするが
シンドバットを探すにはマスルールやルカーナが最適であるしかし、今日はマスルールが居ないためジャーファルはルカーナに頼んだのだった
「 見つけたら速、私の所へ 」
ふふ… 、 と黒い笑みを浮かべ、ジャーファルは持っていた書簡をギリィと掴み「後で覚えてろ馬鹿殿」と普段より低い声で呟いた 馬鹿殿って何処かで聞いたことあるなぁなんて思いながらルカーナはシンドバットを探すために歩き出した
「 今日は何処にいるんだか あの人も懲りないなぁ… 」
カツンカツンと城の大理石を踏み鳴らしながら歩いていると何やら喧嘩しているらしい声が聞こえる「魔法よ!!」「剣術だっ!!」もしかしなくてもあの二人だ 声のするほうへ向かうと、予想通り喧嘩しているシャルルカンとヤムライハである ルカーナにとって、魔法も剣術もそこまで拘りは無く、この二人の喧嘩はどうでも良いと思っているのでいつも関わらないのが彼女だったのだが、シンドバットを見ていないか聞かなければならなかった
「 二人とも ちょっと良い? 」
「「 良くないっ!! 」」
素晴らしいハモりであった …ではなくてそれはこちらとしても良くない訳で
「 や シン王見てないかなって 」
「 あっ ごめんなさい、ルカーナ シャルが悪いのよ」
「 悪い ルカーナ でもこいつが魔法が一番とか言ってやがるから 」
「 何が悪いのよ!? 」
「 はぁ? 剣術が一番にきまってんだろ 」
駄目だ、この二人に関わらなかった方が良かったかもしれないと今更ながらルカーナは思うのだった
「 あ…はは、 じゃあ私シン王探してくるから 」
ガシッ!!
「 へ? 」
突然の事に吃驚したので変な声を出してしまった ルカーナは動けなかった なぜなら二人がルカーナの腕を掴んでいたからだ
「「 ルカーナ やっぱり魔法/剣術が一番よね/だよな!? 」」
同時に言う二人は息がぴったりで本当は仲が良いのではとふと感じた
「 やっぱり仲が良いんじゃ… 」
「「 ないっ!? 」」
絶妙なハモりは二人にしかできないと思う その場は曖昧に返事をしルカーナはまたシンドバットを探し始めた、喧嘩をしていた二人は見ていなかっただろう
歩き出したルカーナの目にはアリババ、アラジン、モルジアナの三人が見えた あの三人は本当に仲が良い シンドバットの行方を三人に聞いてみることにした
「 やあ、三人とも 」
「 ルカーナおねいさん!! 」
ルカーナを見つけたアラジンは眩しい笑顔を見せた
「 ルカーナさん、こんにちは どうかしたんすか? 」
「 こんにちは 」
アリババとモルジアナは続けて挨拶をした「 シン王見てないかな? 」
「 シンドバットさんすか? 見てないですけど 」
なぁ、とアラジンとモルジアナに聞く
「 ぼくも見てないよ 」
「 私も 」
この三人も見ていないか… どうしたものか
「 そう …モルジアナってマスルールと同じファナリスだよね 」
「 ? …はい 」
「 じゃあ シン王の匂いってわかる? 」
そう、ルカーナが考えたのは マスルールと同じくファナリスであるモルジアナの鼻を頼りにする事だ
「 かすかですが 分かります 」
「 お願いしてもいいかな 」
「 はい ルカーナさんの頼みなら 」
モルジアナはそう言うと微笑んだ やっぱり可愛いなモルジアナは
鼻が利くのは便利
そうしてモルジアナのお陰で シンドバットを見つけ出すことができたのであった
(ルカーナ、これ外してくれ) (却下) (一生のお願いだ) (前も聞いた気がするけど) (頼むっ!?) (逃がしませんよ、シン) (ジャーファルっ!!) (ふふっ…、さあシン、私とお話でもしましょうか)黒笑
最終兵器はモルジアナ
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