陽ちゃんは小さい頃から、なんでも一人で抱え込んでしまう癖があって、苦しんでいた。 それなのに、私はそんな陽ちゃんに何もしてあげられなくて。 陽ちゃんを苦しめてたのは私だったんじゃないかって思う時がある。 陽ちゃんのことを、大ちゃんと同じくらいに分かってたはずなのに。
陽ちゃんが無理して笑ってるのを見るのはつらいんだよ? 私、ちゃんと知りたいよ。 陽ちゃんが何を思って、何を感じて、 どうして苦しんでるのか。
ある日の放課後、私は、陽ちゃんが学校の裏庭に行くのを見つけた。 でも、変なのは後ろについて行く数人の女子生徒。あれは確か、女バスの二年生たちだ。 陽ちゃんは部活を辞めたんだから、もう何の関わりもないはずなのに。 私は彼女たちを追うことにした。 足を動かそうとしたその時、
「 桃井さん? 」
「 てててっ、テツくん!? 」
テツくんがそこにいた。
「 どうしたんですか? 部活が始まりますけど 」
テツくんはそう言った。
「 あ、あのね……陽ちゃんがさっき女バスの子たちと裏庭の方に行くのを見て ……私もついて行ってみようかなって 」
「 一人でですか? 」
「 あ、と…… それは 」
「 僕も行きます 」
「 いいの? 」
テツくんの言葉は、私にとって救いだった。
「 はい、陽輝さんが心配ですし 」
後で赤司くんが怖いですけど、行きましょう……
テツくんと私は、陽ちゃんと女バスの子たちの消えていった方へと歩き出した。
近づくにつれ、話し声がだんだん大きくなっていった。 聞こえてきたのは、陽ちゃんに対する酷い言葉だけ。時折、何かにぶつける鈍い音か聞こえる。
「 あんた本当にムカつくんだけど 」
「 聞いてんの? うつむいてんじゃねーよ 」
ドンッ!!
『 ……っ!? 』
「 男子の制服着てるとか マジキモいんだよね 」
「 そうそう、頭大丈夫? スカート嫌いだからって我が儘言って男子の制服着てんでしょ? ……いい加減にしろよ、何様だと思ってんの 」
『 …… 』
「 何か言えよっ 」
バッ!!
一人が陽ちゃんに手をあげようとした時、テツくんがその手を掴んだ。
「 なっ!? 誰 」
「 一人に対して 卑怯だと思います 」
「 陽ちゃん!! 大丈夫? 」
「 ちっ 」
「 もう、行こう 」
バタバタ と女バスの子たちは去っていった。
私は陽ちゃんの傍に行く。
「 ……さつき? 」
なんで、 と陽ちゃんは小さな声で呟いた。
陽ちゃんは体のあちこちを怪我していた。
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