今日は朝から雨が降っていた
部活が休みになって僕は図書室へと向かった
図書委員であるためカウンターの仕事があったからだ
返却された本に返却日を記入したカードを入れていく
ふと貸し出し者名を見るとそこには 『青峰陽輝』と あった
綺麗な字だと思いながら本にカードを入れた
あらかた仕事が終わるとカウンターの中で読書を始めた
図書室は、本を探している足音やページを捲る音以外は聞こえてない この静寂さが僕は好きだ
ちょうど一冊読み終わった時に声を掛けられた
「 今日は部活無いんだ 」
「 陽輝さんですか はい、今日は部活無いんです 」
「 ふうん… あ、ねぇ 黒が読んでるやつ 」
「 あぁ、これですか 」
読み終わった本を持ち上げて見せる
「 読んだことあるな 」
「 そう言えば、貸し出し者名にありましたね 陽輝さんは今日はどうして図書室に? 」
「 雨降ってるから 暇潰し程度に 」
「 傘は? 」
「 忘れた …なんか黒に帰れって言われてるみたいだ 」
「 そうは言ってません 」
「 そうだ 黒 傘に入れてくれないか? 」
「 良いですが、でも途中で道が違いますよ? 」
「 走って帰れば平気 」
「 そうですか 」
図書室から出て昇降口まで歩き
履き替えて傘を広げ雨の降る道を歩き出した 「 あの…陽輝さん背が高すぎます 」
陽輝さんは175pであるのに対して僕は168pなのだから手を伸ばそうにも疲れてしまう
「 黒、 傘貸して 」
そう言うと陽輝さんは傘を持った
「 これなら良い? 」
「 はぁ、ありがとうございます でも何か複雑です 」
「 そう? …でもさつきに見られたら怒るだろうな 」
分かれ道に着くと陽輝さんは僕に傘を渡して言った
「 黒、ありがとう 」
「 いえ 」
「 じゃあ、また明日 」
「 はい、また明日 」
走って行く陽輝さんの背中が見えなくなるまで僕はずっとその分かれ道から動かなかった
|