「 あまり無理し過ぎるのは良くないのだよ 」
「 緑か 」
「 お前は何故、周りに頼ろうとしないのだよ 」
「 今は緑がいるし 別に頼ろうとしていない訳じゃない 」
俺は時々、こいつが分からない時がある
今だって、体育館裏でぼろぼろで、白い制服が土埃で汚され、罵られ 殴られ、蹴られ 、顔には多少なりとも傷が付いているのにも関わらず誰にも助けを求めることもしない
「 お前は苦しく無いのか? 」
「 別に 苦しくともなんともないさ 」
こいつがぼろぼろになっているのを見るのは何度目なのだろうか
「 緑 誰にも言うなよ 」 「 分かっているのだよ 」 そう言って何度も周りに口外しないように頼むのも当たり前になっている
「 ありがとう 」
「 今日は一段と酷いな 」 「 これじゃ何て言い訳してもしつこく聞かれそうだ 」
「 はぁ… 」
「ため息は何かが逃げるって言ってたけど… 何だっけ? 」 「 誰のせいだと思っているのだよ 」 「 さあ? あ、そうだ 」 「 何だ? 」
「 緑のジャージ貸してよ 」
「 …… 」
「 今日洗って明日の朝には返すから 」
「 …分かったのだよ 」 「 ありがとう 」
「 早く教室に行くのだよ 」 「 そうだな 」
陽輝が立ち上がり土埃を払うのを見届け 歩き出そうとする緑間の背中に何かがぶつかった
「 何をして 」 「 少し… 少しだけで良いから このままで 」
「 分かった 」
いつもと違う弱々しい声が俺の耳にいつまでも残った
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