衝動(元:iして)
ゆび(元:モーヴ)様より
キリ番記念小説を戴きました
お持ち帰り厳禁


羊の夢をみる


赤ペンで波線を引いていく。ああ、眠い。お腹がいっぱいで、暖かな日差しがあたる午後の授業。これで寝ない者はなかなかいないだろう。

寝ないように隣を見ると、黒子君が寝ていた。すやすやと子供が眠るようにして。何故かその姿に胸が疼いた。

いや、疼いている場合じゃない。少々心苦しいが黒子君を起こさなければならない。小さな、小さな、声で黒子君に呼びかける。

「……黒子君、黒子君」

「ん…寝て……ました？」

「寝顔可愛かった」

そう言うと黒子君は寝起きで赤くなっている頬を、恥ずかしそうに掻いた。
またしても私は何故か、黒子君の頬を指先で触りたいと思い疼いた。

「名前さん…？」

「あっ、ごめん。その……触りたいなって。変だね。ごめん」
「……いいですよ」

「え？」

黒子君が変なことを言うから私は変な声を出してしまった。まあ本人が承諾したからいいかと思い、遠慮がちに指先で触ってみる。

「柔らかい……」
「そうですか？」

「うん」

私が「ずっと触っていたい」と言ったら「そのうち、名前さんもボクに飽きますよ」と黒子君が書きながら答えた。

「飽きないよ。ずっと。こんなあったかいところなんて、離れられないもん」

「……そうですか」

指先から伝わる体温が、少し熱くなったような気がした。黒子君、と呼びかけても、彼は何も答えずシャーペンを走らせていた。

≪　≫