金魚すくい
「 あっ 奏ちゃん!! 」
「 さつきちゃん? 」
私に話掛けたのは桃井さつきちゃん 帝光中学バスケ部のマネージャーをしている
そして、青峰くんの幼なじみだ
「 探してたんだよ〜 奏ちゃんのこと 」
「 そうなの? 」
「 うん 」
さつきちゃんはなにやら私に用があるみたいだった
「 それで? 」
「 あのね …明日の夏祭り一緒に行かない? 」
「 夏祭り? 良いよ、私でよければ 」
「 ありがとう!! じゃあ、またあとで連絡するね 」
「 うん 」
さつきちゃんは嬉しそうに笑って帰っていった
本当、可愛いなぁ…
この時の私は、夏祭りに一緒に行くのがさつきちゃんだけだと思っていた
夏祭り当日、 私の家の前に居たのは 青峰くんだった
「 …青峰くん なんで家の前に居るの? 」
「 よぉ、 …さつきに言われたんだよ お前を迎えにいけって 」
「 さつきちゃんが? 」
「 だから早く行くぞ 」
「 う、うん… 」
青峰くんは私の手を掴んでグイと引っ張って歩きだした
浴衣に下駄という私の格好では転びそうになる
「 青峰くん もうちょいゆっくり歩こうよ 」
「 わりぃ 」
青峰くんは歩くスピードを下げて後ろを向いてそう言った
それからまた歩き出して、さつきちゃんと合流し 夏祭りのある会場へと入っていった
出店を見て回っていたら 金魚すくいの店を見つけた
「 奏ちゃん 金魚すくいしよ 」
「 うん でも、私 下手だから… 」
「 大丈夫 青峰くんが取ってくれるから!! 」
「 んで 俺だよ 」
「 ふ〜ん 良いんだ そんなこと言って 」
「 …やればいんだろ 」
さつきちゃんが青峰くんにそう言うと 青峰くんは渋々と言った表情になっていた
「 奏ちゃんに良いとこ見せないとね? 」
「 へ? 」
「 おいっ!? さつき 何言ってんだよ 」
「 ふふっ じゃあやろっか 金魚すくい 」
さつきちゃんは至極面白そうに笑った
パシャンッ
「 あ〜 破けちゃった 」
すくっていた金魚は水を求めて水槽に帰る
ポイは破けてしまった
「 私も破けちゃったよ 」
さつきちゃんも逃げられたようだ
青峰くんはと言うと 手に持っているボウルに金魚が五匹
一匹も獲れなかった私はショックだ
「 青峰くんって 本当、金魚すくい上手いね 」
「 そうか? これくらい普通だろ 」
「 やっぱり良いとこ見て欲しかったんだ 」
「 うるせぇ!! 」
パシャッ
青峰くんがさつきちゃんにそう言った途端に青峰くんがすくっている途中だった金魚がポイを破って落ちた
「「 あ 」」
青峰くんと私の声が重なった
「 残念だったね 」
「 うん 」
金魚すくいの店のおじさんに金魚を袋に入れてもらう
何故か二匹と三匹に分けて入れられていた
そのうちの一つを青峰くんが私に差し出した
「 くれるの? 」
「 あぁ 」
恥ずかしがりながら青峰くんはプイと横をむいた
「 ありがとう 」
「 良かったね 青峰くん 奏ちゃんと夏祭り行けて 」
「 後で覚えてろよ… 」
私も青峰くんと夏祭り行けて良かったよ
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