present 黄瀬誕
―6月18日
それは黄瀬涼太の誕生日
というのを知ったのは前日の夜、雑誌の特集に調度彼が載っていたのを見たときだ
インタビュー形式の対談だった
記者: 黄瀬さんはもうすぐ誕生日でしたよね?
黄瀬: そうッスね ちなみに6月18日ッス (笑)
私は(笑)にイラッとしたけれど そのまま読み進めた
記者: 誕生日プレゼントを貰うとしたら何がいいですか?
黄瀬: うーん… 大切な人から貰えるなら何でも良いッスよ
気持ちが込もってるから嬉しいッス
記者: 大切な人が今いますか?
黄瀬: まぁ…いるっちゃいるんスけど 片想いッスかね
記者: 片想い…ですか
そこまで読んで 私は雑誌を閉じた
あのデルモに片想いの相手がいるのか、と思った あの忠犬ワンコ、私に付きまとうんじゃなくて片想い相手のとこに行けばいいのに…と半ば呆れながらため息を吐いた
次の日 黄瀬涼太の誕生日当日
彼の周りにはいつにもまして女生徒が群がっていたクッキーやら何やら貰ってヘラヘラしている顔を見て 何故かイライラした私は屋上へと向かった
いつもは
「 葵っち!! 」
とくるはずなのに 今日は来なかった
「 …何で落ち込んでるんだろ 私 」
あれほど鬱陶しかった彼が来ないことがこんなに寂しいなんて 気が付くとポロポロと涙を流していた
「 あ…れ? 何で…私 」
その時、バンッ!! と扉の開く音がした
「 葵っちー どこッスか? 」
彼だった 私は顔を見られたくなくてバッと隠した
「 あっ いたッス 葵っち 」
「 … 」
「 どうしたんスか? 具合でも悪いとか 」
何も言わない私に黄瀬くんはそう言った
「 …っさい 」
「 へ? 」
「 うるさいっ!! 何で来たのよ 」
「 だって俺、葵っちのワンコッスから 」
「 私じゃなくて好きな人に祝ってもらえばいいじゃんか 」
「 葵っち? 」
「 何で私にかまうのよっ!! 」
私はボロボロと涙を流しながらそう言って 屋上から出ていこうとした
「 葵っち!! 」
「 え!? 」
私は驚いた 彼は私の手を引いて グイッと自身の方へと引き寄せた
「 離してよっ!! 」
「 いやッス 」
私の抵抗に彼はぎゅうと抱き締めた
「 何で 」
「 俺は 葵っちが好きだから …好きだから一緒に居たいんスよ 」
「 嘘… 」
彼の口から出た言葉が信じられなかった
「 嘘じゃないッス 」
俺は葵っちが大好きッス!!
「 じゃあ、あの記事の 大切な人って 」
「 葵っちのことッス てゆーか 雑誌買ってくれたんスね 」
彼は嬉しいッスと笑った
「 …別に あんたが載ってたからとか そういうんじゃ… 」
「 葵っちはツンデレッスね 」
彼の言葉を聞いて少しむぅっとしながら私は
「 違うし …てか、いつまで抱き締めてんのよ!! 」
「 ちぇっ 葵っちのいけず 」
それから黄瀬くんを剥がすと私は安心感からか、ふぅと息を吐いた
「 葵っち プレゼントないんスか? 」
あぁ、何故だろう 耳と尻尾が見える
「 そんなのあるわけないじゃない 」
「 えぇ〜 ひどい 」
泣き真似をしているデルモはキモい
「 …来年 」
「 へ? 」
「 来年なら考えてやらないでもない 」
「 葵っち 」
パァッと彼の顔が明るくなったかと思うと
「 やっぱり、葵っち好きッス!! 」
ガバッと飛び掛かってきたデルモを私は華麗に避けた
「 いきなりくるな 」
「 痛い… 」
記者: では最後に一言どうぞ
黄瀬: もしこの記事を読んでたら 俺はそれでも良いッス
でもこれだけ言っておきたいんで言っておきます
俺は 君のことを
記事の最後にあった言葉は―
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後書き的な何か
・黄瀬くん誕生日おめでとさん☆
・書かないとか言っといて書くやつはどこのどいつだ
お前だよヾ(--;)
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