二度と会わない約束をしよう.3 | ナノ

(※(ツナ)←雲雀(←骸)。出てるのは雲雀のみ。)



『貴方も気付かないほど馬鹿ではないでしょう?』
『見送りぐらいしてあげてください。』

手をひらひらと振りながら去っていく彼の背中を、見えなくなるまでずっと目で追った。
そしてその背中が見えなくなった後、額に手をあてながら深い溜息を吐き出す。
(気付いてたさ。ずっと、あいつと真剣に向き合ってたんだから。)

月明かりのみ射しこむ廊下を、ゆっくりと歩く。
向かう先は決めてない。ただひたすら無意識に。足は前へ前へと進む。

(……僕は、卑怯だ。)

その言葉を噛み締めるように、滲みそうになる視界を瞼で遮る。
真っ暗な視界の中で浮かぶのは、この世界の運命を僕と過去の自分に任せ消えた人と、
(むく、ろ……、)


『雲雀恭弥、』

廃墟の中で古びたソファに腰掛け不敵に笑ったあいつを。
初めて見た瞬間に感じた衝動は、名前のつけられない程不格好な、
(焦げ付いたような真っ黒い感情だった。)

『雲雀君、遊びましょう。』

出会いから数年経っても未だに牢獄から出られない彼は、
度々眼帯をした少女の体を借りて僕のところまで遊び(と言う名の戦い)に来ていた。
自分の力についてこれない体を気遣いながら、揮う槍は以前と衰えない。

『恭弥…相変わらずですね。』

フラフラと行方をくらませるあいつは、ボンゴレ本部で僕に会う度同じことを言った。
笑いながらも、安堵したような切なそうな、微妙な表情を浮かべながら。
(その表情の意味なんて、僕は知ろうともしなかった。)

気付いたのはいつだったか。
紅と蒼のオッドアイがゆらゆらと揺れて、それはまるで恋でもしているかのような。愛おしそうな眼。
そんな瞳と見つめ合って、逸らされた眼から、わざと眼を逸らせたのは。
本能的な部分か、それとも…僕の心か。


『…君は、泣かないんですね。』

沢田のデスクを見つめる僕に、彼は一言、なんの感情もない声音で呟いた。
その時振り向かなかった僕には彼の表情も分からず、
その声音の意味さえも、分からない。それはきっと、これからもずっと。

(……もしその時振り向いていたら、)



はっ、と。過去の記憶から意識を現在に戻すと、見覚えのない景色。
歩き続ける内に、どうやら随分自分の部屋とは離れたところに来てしまったようだ。
戻らなくては。そう思い来た道を引き返そうとした瞬間、自分のものではない足音が聴こえた。

『明日の朝早くに、』

僕よりも10センチほど背の小さい、華奢な青年の言葉を思い出す。
どうやらこの足音は骸のようだ。(もう、行くのか。)
どんなに足音の立たないように歩いても、消しきれない小さな音が静かに響く。

「……、」

声を、掛けられるはずがなかった。
彼から漂う何かを決意したような雰囲気と僕の罪悪感が、言葉を奪ったかのように。
強く握りしめた拳が、それをより強く思い知らせる。

(情けないな………僕、は。)

彼が開けた扉から、月明かりが射しこむ。
すぐにその扉の外へ出て行った彼の表情は分からなかった。
瞼を閉じて脳裏に刻まれていた彼の背中に祈る。(骸…、必ず、帰って来なよ。)



見送る勇気はありますか
(…君は、僕の唯一のライバルなんだから。)


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骸は出ていくときレオ君の体を使ってますが、幻覚で自分の体に見せています。
普通自分の体に見せる必要はないんですが、話の都合です・・・笑





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