(※(ツナ)←雲雀(←骸)。出てるのは雲雀のみ。) 『貴方も気付かないほど馬鹿ではないでしょう?』 『見送りぐらいしてあげてください。』 手をひらひらと振りながら去っていく彼の背中を、見えなくなるまでずっと目で追った。 そしてその背中が見えなくなった後、額に手をあてながら深い溜息を吐き出す。 (気付いてたさ。ずっと、あいつと真剣に向き合ってたんだから。) 月明かりのみ射しこむ廊下を、ゆっくりと歩く。 向かう先は決めてない。ただひたすら無意識に。足は前へ前へと進む。 (……僕は、卑怯だ。) その言葉を噛み締めるように、滲みそうになる視界を瞼で遮る。 真っ暗な視界の中で浮かぶのは、この世界の運命を僕と過去の自分に任せ消えた人と、 (むく、ろ……、) 『雲雀恭弥、』 廃墟の中で古びたソファに腰掛け不敵に笑ったあいつを。 初めて見た瞬間に感じた衝動は、名前のつけられない程不格好な、 (焦げ付いたような真っ黒い感情だった。) 『雲雀君、遊びましょう。』 出会いから数年経っても未だに牢獄から出られない彼は、 度々眼帯をした少女の体を借りて僕のところまで遊び(と言う名の戦い)に来ていた。 自分の力についてこれない体を気遣いながら、揮う槍は以前と衰えない。 『恭弥…相変わらずですね。』 フラフラと行方をくらませるあいつは、ボンゴレ本部で僕に会う度同じことを言った。 笑いながらも、安堵したような切なそうな、微妙な表情を浮かべながら。 (その表情の意味なんて、僕は知ろうともしなかった。) 気付いたのはいつだったか。 紅と蒼のオッドアイがゆらゆらと揺れて、それはまるで恋でもしているかのような。愛おしそうな眼。 そんな瞳と見つめ合って、逸らされた眼から、わざと眼を逸らせたのは。 本能的な部分か、それとも…僕の心か。 『…君は、泣かないんですね。』 沢田のデスクを見つめる僕に、彼は一言、なんの感情もない声音で呟いた。 その時振り向かなかった僕には彼の表情も分からず、 その声音の意味さえも、分からない。それはきっと、これからもずっと。 (……もしその時振り向いていたら、) はっ、と。過去の記憶から意識を現在に戻すと、見覚えのない景色。 歩き続ける内に、どうやら随分自分の部屋とは離れたところに来てしまったようだ。 戻らなくては。そう思い来た道を引き返そうとした瞬間、自分のものではない足音が聴こえた。 『明日の朝早くに、』 僕よりも10センチほど背の小さい、華奢な青年の言葉を思い出す。 どうやらこの足音は骸のようだ。(もう、行くのか。) どんなに足音の立たないように歩いても、消しきれない小さな音が静かに響く。 「……、」 声を、掛けられるはずがなかった。 彼から漂う何かを決意したような雰囲気と僕の罪悪感が、言葉を奪ったかのように。 強く握りしめた拳が、それをより強く思い知らせる。 (情けないな………僕、は。) 彼が開けた扉から、月明かりが射しこむ。 すぐにその扉の外へ出て行った彼の表情は分からなかった。 瞼を閉じて脳裏に刻まれていた彼の背中に祈る。(骸…、必ず、帰って来なよ。) 見送る勇気はありますか (…君は、僕の唯一のライバルなんだから。) next 骸は出ていくときレオ君の体を使ってますが、幻覚で自分の体に見せています。 普通自分の体に見せる必要はないんですが、話の都合です・・・笑 |