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▼ 盲目と秘密

「それで…やっぱりメローネは危険な仕事をしているわけだ」

リーダーが去った後、正面の席に座りなおした名前が優雅にカップを傾けながら俺に語り掛ける。その表情に色は無くて静かに怒っているような、それとも失望しているかのような、俺にはどちらにも見えた。

「えっと…うん、安全ではないな」

まともに名前の顔を見られない。名前はその瞳を開いてじっとこちらの方を見据えている。見えていないのに見えている様で、今俺はその瞳に恐怖すら感じる。名前に対する恐怖ではなく名前に幻滅され失望され嫌悪を向けられることに対する恐怖だ。いつかこんな瞬間が来るのだと思っていた、思っていたけど早すぎる。心の準備みたいなものは一切できてない。

「なぁ名前、幻滅したか…?俺の事、怖いか?」

手元が震える。柄にもなく俺は緊張しているみたいだ。名前に語り掛けた声まで震えて情けない限りだ。名前はそんな俺の声を聞いて小さくため息をつくみたいに息を肺から外へ長めに吐き出した。

「なんとなく、リゾットさんに会う前からメローネが何かおかしい仕事をしてるなってことは知ってたんだ」
「え…?」

「メローネがたまに怪我作って僕の家に来てたことも知ってる。メローネの物じゃない香水の匂いがしたり火薬のにおいがしたりしたこともあったんだよ。メローネってばそういうところ鈍いから気づいてなかったでしょ?」

しょうがない、って感じで眉を寄せて笑う名前に俺は汗が止まらない。本当に気づいていなかった。名前の家に立ち入るときは服すらちゃんと着替えたりしていたはずなのに、彼の嗅覚は俺が考える以上に鋭いものだったようだ。

「そんな…なんで言ってくれないんだよ」
「僕もちょっとだけ怖かったみたい、メローネが離れて行ってしまいそうで」
「そんな訳ないだろ…名前から離れてくれって言われればその通りにするさ。でも俺から名前の傍を離れるなんて絶対にない」

俺はハッキリと言い切る。こちとら名前が視力を失う前からずっと一緒にいるってくらいの覚悟があるんだ。もし名前に危険が及ぶなら自分が死んででも必ず守る。

「ありがとう、嬉しいよ。僕だってメローネと離れたくなんかないからさ、だからまだ一緒にいてくれる?」

首をこてりと傾けて照れ笑いを浮かべる名前は本当に綺麗だった。もう全て忘れてがむしゃらに泣きたくなるくらいの優しい言葉を、名前はいつも俺にくれるんだ。俺はそんな優しさにいつも救われてる。

「勿論ずっと一緒にいるさ、俺が決めたことだ」
「格好いいね。メローネと一緒なら、僕は何があっても大丈夫って気がするの」
「名前…」

つい視界がゆがみそうになる。名前がまるで子供を撫でるみたいな柔らかくて優しい声で俺にそんなことを言うから。感情を揺らされるたびに俺はいつも名前への愛を実感する。

「今日はこの後どこにいこうか」
「そうだな、まずは…」

お互いに一つずつ秘密を共有し合ったけど、俺と名前の仲には何も変わりはなかった。むしろより強く結ばれた気すらするのだ。もう俺達に何も困難なんかないかもな。俺と名前は今日のデートについて軽快に話し始めたのだった。



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