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▼ 盲目と遠出(後編)

ホテルに帰ってきた俺と名前はとりあえずシャワーを浴びることにした。先に俺、そのあとにシャワーとかシャンプー類の位置とかの説明を名前にしてから彼がシャワーを浴びる。いつもと違う設備にきっと名前は戸惑うだろうが彼の順応性は昔からえげつない程高いからきっと大丈夫だろう。

「あー、気持ちよかった」

気の抜けた名前の声に俺は適当に眺めていたパンフレットから顔を上げる。風呂上がりの名前は、なんていうかもう神秘的なほどだった。彼の濡れた髪と湿った肌は恐ろしい程になまめかしくて、それがどこか現実離れした美しさを放っている気がする。

既に乾かした自分の髪の毛を耳にかけて風呂上がりの名前の手をそっと握る。ほとんど一緒に暮らしているような俺たちだったが名前のこういった姿を見る機会はあまり多くなかった。その理由は多分、見たら俺が我慢できなくなるから。今だって気を抜けば何をしてしまうか。

「素敵なシャワーだった」
「それはよかったな」

えへへ、と笑う名前はバスローブが似合わない程、いくらか幼く見える。彼の頬は薄く桃色に染まって身体からも湿ったぬくもりがあふれている。

「おいで、髪を乾かそう」

名前を適当な椅子に座らせて、その後ろからドライヤーの熱風を当ててやる。もちろんこんなこと名前は自分で出来るのだが俺が勝手にやっているのだ。こうやって恋人を甘やかすことが俺にとって何よりの至福の時間だ。
名前は男にしては少しだけ長めではあるもののやはり髪型の分類としてはショートヘアくらいで、あっという間に乾いてしまった。艶のある髪はふわふわと柔らかくて、思わず顔をうずめてしまいたくなる。

「名前の髪は綺麗だな」
「そうなの?」
「ああ、サラサラしてて艶があっていい匂いがする」
「それはメローネの髪も一緒だよ、すっごくいい匂いする」

お互いにお互いの髪を褒め合う、ゆったりと口づけをして、それはどんどん深いものへと変わっていく。むせ返るような甘い時間と空気が確かに俺と名前の間にはあった。

「やっぱりまだちょっとだけ恥ずかしいな」
「すぐ慣れるさ」

名前の初心な反応は今に始まったことじゃないけれど、この感情を揺さぶられるような魅力に俺はただ胸を高鳴らせていた。きっと“そういうこと”はまだ我慢してないといけないんだろうけど、これから名前となんでもできるのだと思うと俺はそれだけで幸せだった。

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