あかるい笑顔だなあ、と思っていた。どんなときだってその笑顔でみんなをはげましていた。だけど、人一倍傷つきやすくて、怒りやすくて。君の表情はころころと音をたてるように変わるんだ。

「ねえねえ」

「なあに?」

「あのさ、」

すきな人いる? 塔子にそんなこと聞かれるなんて思わなかったなぁ。そういってみたら、顔を赤くして膨れっ面をした。そういうところがかわいいんだよ。そういうところが彼が君をすきな理由。

「まじめに答えろよ」

「はいはい。……いるよ」

「……えっ!はじめて聞いた」

そりゃあそうだよ。言ったことないもん、言えるわけがないもん。塔子が彼に抱く気持ちとわたしが塔子に抱く気持ち。同じはずなのにね、全然ちがうんだよ。

塔子にはすきな人がいる。たぶん、代表のみんなは知らないけれどわたしは知ってるよ。ふたりは初めて会った時から仲がいい。ほら、けんかするほど仲がいいって言うでしょ?
それに比べてわたしと塔子はけんかをしたことがない。塔子からシャワーのように流れ出るたくさんのおはなしを、わたしは土のようにぐんぐん吸収する。わたしは自分のことをあまり話さない。それでも塔子はわたしのことをたくさんしっているから不思議だ

「教えてくれないの?」

「自分で考えてみなよ」

「ヒントちょうだい?」

塔子だけにはばれたくないのにそうやってかわいく尋ねられてしまったら答えないことなんてできない。惚れた弱味ってこういうことか。
わたしは初めてを塔子にたくさんもらってる。

「ヒントはね、髪の色がきれいなの」

「えーっと……、風丸か?」

「ううん、ちがうよ」

うーん、と悩みながらヒロトとか緑川とか、佐久間。それから、知らないやつじゃないよな?ってきかれたり、しまいには壁山…なんて!お世辞にも壁山くんの髪の色はきれいとはいいがたい。

ねえ、塔子。気付いてるかな?まだ彼の名前を言ってないんだよ。あんなにきれいな髪の色をしている彼の名前。忘れてるわけじゃないんだよね、言いたくないだけなんだよね。ほんとうに塔子ってかわいい。わたしがすきなのは塔子なんだよ。だから大丈夫、言ってごらん。


「つ……綱海、なの?」


ちがうよ、綱海じゃあない。わたし、綱海がいやだ。あんなやついやだよ。塔子を一番の笑顔にさせちゃうあいつ。だけど綱海はきらいじゃないよ。だって、塔子の一番の笑顔は見たいもの。


「わたしはね、塔子のすきなひとをすきになったりしないよ」

「す、きなって…、」

「塔子は綱海がすきでしょう?」


うっ…、と言ってどもる塔子、顔もまっかになって、かわいい。きっとこの顔もいつか綱海のものになっちゃうんでしょ?だったら綱海のやつにはまだ見させてあげない。



/神様、あの子がほしい
39sはらぺこ
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