視線

「派手なパーカー」シリーズの2人の話。



ほんの一瞬。
ふと、顔を上げた瞬間とか
偶然ばったり出くわした時とか
何気ない会話の合間とか

そんな一瞬に絡み合う視線が大好きだったりするんだ。





井上先生の家にお呼ばれした夜。
明日は丸々俺とゆっくりする為にと今は今日の提出プリントの確認をしているからと、一応生徒として内容を見ない様に少し離れたソファーの上でゴロゴロ。
採点をしてる先生の背中を見たり、携帯弄ったりしてたけどそんな事30分前に飽きた。

(こっち向けーこっち向けー)

『仕事してる男の背中は格好良い』
なんて、どっかの本で読んだ言葉通りなこの光景も、流石に見飽きたら格好良さも半減だ
………いや、先生はいつだって格好良いけど……悔しいから半減したって事にしとく。

(……今なら半減した格好良さを戻してやるからこっち向けー)

とにかく此方を見て欲しくてひたすら念を送信するも、肝心の先生が受信してくれないからどうしようもない。

ちぇ。なんてひねくれながら、ソファーに深く腰を預けた瞬間。

「あっ……」

先生から少し離れた場所に置いてある姿見の鏡に写って見えた
後ろに居る俺を気にして視線を動かす先生の姿。

しかも、そんな彼の視線に一瞬、俺の視線が絡んで

「っ……!!」

間接的に交ざったお互いの視線が妙に照れ臭く感じて
さっきまで先生を見ていた視線を少しだけ下げてしまった。

(何か……直接目が合うより恥ずかしいかも)

灯る頬の熱を自覚しながら鏡越しに絡んだ視線が気になってそろりと目線を元に戻すと
先生は何処か満足げに笑ってプリントと向き合い直していて。
その笑顔にまた顔に熱が灯った。



ほんの一瞬。
ふと、顔を上げた瞬間とか
偶然ばったり出くわした時とか
何気ない会話の合間とか

そんな一瞬に絡み合う視線が大好きだったりするんだけど
さっきの様に、鏡越しに絡む視線も好きになってしまいそうだと頬に集まる熱を感じながら思ってしまった。



end

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