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「ちょっと」
名前ちゃんが熱心に画面を見つめているのに彼はいつもより少しだけ低めの声で声を掛けてきます。
「ねえ」
しかしそれになかなか気づかない様子の名前ちゃん。彼はむすっと眉を顰めました。名前ちゃんの目の前に仁王立ちをして影を作りますが、それでも名前ちゃんは知らんぷり。というよりも、本当に気づいていないようですね。
「名前」
ついに彼は名前ちゃんの肩にトンと手を落とします。びくっと肩を上げ、ついでにやっと顔を上げた名前ちゃんの目はまんまるに見開かれていて本当に今彼の存在に気づいたようです。彼はそんな名前ちゃんに大袈裟にハア…とため息をついて見せました。
「あ、藍ちゃん、どうしたの?」
「どうしたのじゃないよ…、僕がいつからキミを呼んでいたと思ってるの?」
「へ、聞こえなかった…」
彼の顔はあまり機嫌の良いものとは思えません。名前ちゃんは苦笑いをしてどうにかこの場を乗り切ろうとしますが。
「だめな子だね、僕を無視するなんて」
ぎし。彼は名前ちゃんの足の間に自分の膝を割り込ませ、ソファに凭れている名前ちゃんを追い詰めるように覆いかぶさります。
「へ、藍、ちゃ」
「キミはこうして直接僕に触れられなきゃ、僕のことを見てくれないのかな」
「そそそそんな!」
「でもずっとiPhone見てたよね、せっかく僕といるのに」
彼の目はぎらっと光っていて、怒っているときの顔なのか、意地悪したいとき顔なのか、欲情しているときの顔なのか、まったく見当がつきません。ただこのままだと悪い方向に持ってかれそうなことだけは名前ちゃんにも分かりました。変な汗をかいてきます。
「ちょ、ちょっと、落ち着こう、藍ちゃん」
「それはキミの方なんじゃない?心拍数も呼吸数も上がってるし随分動揺しているみたいだね。どんなことを期待してるの?」
彼はにやりと笑うと名前ちゃんの頬を優しくなぞりました。そのわざとらしい質問に一気に顔を真っ赤にしてしまった名前ちゃん。彼は名前ちゃんの手からするりとiPhoneを奪うと、そのiPhoneにちゅっとリップ音を立ててキスを落とします。
「名前は悪い子だから、僕と会ってるときにこれは、お預けだね」
彼はとても悪い顔をしていました。名前ちゃんははくはくと口を開け閉めしていましたが、彼の顔が近づいてきたので観念したように目を閉じました。彼は名前ちゃんに深いキスを与えながら名前ちゃんの服を乱していきます。これから長い長い2人きりの夜が始まるのでした。
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10月までお預けされて悲しむフォロワーさんが多く、捧げたくなりました。藍ちゃん初書きなのでキャラが掴めていません。
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