(1/1)




「あっちー…」

言わなきゃ良かった。暑いときに暑いなんて言えば余計暑くなるって誰かが言ってたもん。

「暑いね、名前」
「うん、暑いから近寄らないでね」

じりじり太陽が高い位置にあるのに、私達は練習場所が取れなくて外のベンチで歌の練習している。学校のベンチって狭い。誰がこんな狭いベンチを作ったんだ。音也が近い。

「ね、音也、もう帰ろうよ」
「えー、だってまだ全然練習してないじゃん」
「こんな炎天下にいたくないよ」
「でも練習しなきゃ、俺トキヤに負けたくない」

音也はやる気のあるいい子だ。よしよしいい子、でも帰らせて。帰ってお昼寝したい。私は音也をじっとり見つめた。

「分かった、午後やろう」
「今も午後もやる!」
「私お昼寝したいな」
「じゃあ寝てていいよ、俺が子守唄歌ってるから」

うーん、音也のやる気に完敗。私は靴を脱いでから音也の膝の上に乗ってるギターを退かして、その上に頭を置いた。何だこの体勢、太陽が顔面向けてぎらぎら容赦ないじゃんか。

「名前、な、何してるの!?」
「何ってお昼寝だよ、さっさと子守唄歌いなさい」
「え、でも、」

自分で言っといて音也は慌てた。なんだなんだ冗談だったのか。でももう眠いから起き上がってあげない。しばらく目を瞑っていたけど音也がなかなか子守唄を始めない。どうしたんだろうって思って催促。

「おーとや」
「っ、」

ぴくっと膝が動く。枕が勝手に動くんじゃない。怒ろうとしたら、額に柔らかい感触。

「…」
「…何してんの」

音也が私の頭を撫ではじめた。何なんだこの子。てゆーか、手がいやに熱いな。音也子供体温だから正直暑苦しいし触らないでほしい。

「ちょっと、音也」
「え、あっ…ごめん」

音也はぱっと手を離す。ちょっと汗ばんだそこへ風が吹いて気持ちいい。相変わらず太陽は暑いけど寝ちゃえば分からないはず。さあ寝よう寝よう。

「…」
「…」

あれ、どうしたの音也くん、何で歌ってくれないの。さっきまでのやる気はいずこ。いつも黙っててって頼んでも黙らないくせに、何で。私はそろりと目を開いて音也の様子を窺った。でも、すぐに後悔した。
音也が、熱い。

「…何で真っ赤なの」

音也は私を見下ろしながら顔を真っ赤にしてた。変なの、髪の毛と同じ色だよ。そうからかってあげたかったけど音也につられて私の顔まで熱くなったからやめた。

「だ、だって、名前が膝の上にいるから、」
「から?」
「おれ、なんかわけわかんなくなっちゃった…」
「なんじゃそりゃ」

音也はますますカァァッと顔を熱くさせて視線をちろちろ泳がす。いつにもまして落ち着きがないなぁ。ついでに私の心臓も落ち着きがないなぁ。音也くん、それ、私を意識してるって言ってるように聞こえるんだけどなぁ。私がふふっと笑うと、音也は自分の心臓あたりの服を手でぎゅうっと握った。わざとなのか、鈍感なのか。


「音也」
「っ、なに!?」
「アイス食べたいね」
「え…?うん、そうだね…?」




(( 熱に酔わされて ))




(でも恋愛禁止だから、まだ気づかないふり)(今その熱を冷ます方法はアイスしか見当たらない)




--------------------

指切りさまに提出させていただきました。素敵な企画をありがとうございます。恋に気づけない鈍感音也と恋に気づかないふりの主人公が書けていたらいいな…。
(  )

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -