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※砂月視点
お前らの前からすぐ消えてやるから。だから最後くらい愛されたい。…なんて、我が儘だったな。今はすげえ後悔してる。
「ひ、あぁ、きもち、んっ!」
「奥が好きなんですねぇ。ふふ、名前ちゃん可愛い」
「はぁ、う、あ、あん」
いつもならシーツを握りしめながらやだやだ泣く女も、俺がちょっと那月を演じればすぐこれだ。気持ちいい気持ちいいと腰を振って腕を俺の首に絡ませてくる。那月の前だとこんなに可愛いのか。こんなに素直なのか。
那月はこんなに求められているのに俺は何で。
「あっ、あっ、なっちゃん、んあっいっちゃう、いっちゃうよぉお…っ」
「いってもいいですよぉ」
「や、やらぁ…っなっちゃんといっしょに、いくのぉ、はぁん、らめぇきもちいよぉぉおっ」
「…っ」
奥までぶっ刺してんのに女はもっとと言うように俺の腰に脚を絡めて引き寄せてくる。ナカはいつも以上にとろとろで初めての感覚に戸惑う。那月はいつもこうなのか。こいつの、こんな幸せそうな、こんな気持ち良さそうな顔を独り占めしてんのか。まるでこいつの全身が那月に愛を叫んでいるようで、俺なんかが入る隙もなかった。最後に愛されたいなんて欲が出たがこれじゃあ俺を拒まれて那月を愛してるって改めて言われたようなもんだ。悔しい。同じ顔なのに、同じ体なのに、俺はこいつには必要とされない。
「っ…名前ちゃん、もう少し頑張れますかぁ…?」
「ひゃあぁあっむりぃっむりだよぉ…っあ、あん、きもちい、あ、なっちゃぁん…っ」
俺はこいつに名前を呼ばれたながら求められたことなんてねーのにな。那月が羨ましい。
「くっ…ぼく、もう、出ちゃいます…!」
「あっ!あん、あ、はやくいってぇえ…っはあぁうあ…っ!」
結局女は俺より先にイッたが、女の締め付けで俺もすぐイッた。
「名前…っ」
イく間際に呼んだ名前、届いてねえだろうな。俺が初めて砂月として名前を呼んだ。そして、これが最後だ。
女は行為が終わったらすぐに寝息を立てた。よっぽど疲れたんだろうな。無防備に幸せそうな顔で俺の前で寝る。那月だと思っているからこそできることだ。俺は女の頭を意味もなく撫でた。俺は邪魔者だと何度も自分に言い聞かせながら撫でた。
「んっ…」
女が声を漏らす。俺の口元は思わず口角が上がった。いつの間にかこんなに惚れていたなんて。
「那月…、今までありがとう、こいつをよろしくな」
女には挨拶しなかった。最後までこいつは俺を恐れていた。1度くらい普通に話せたら良かったんだけどな。
じゃあな、女。
俺は眼鏡をかけ直して女の横に寝転がった。
(( 何かを護る為には ))
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