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※主人公視点/毒舌




銀ちゃんはだめな人間だとか、天パだとか、よく言われてる。でも強いところや仲間を大切にするところはかっこいいとも言われてる。ギャップにやられる人もいるらしい。良かったね、銀ちゃん。でも、私はそんなこと思わない。銀ちゃんはかっこいいだとか全くの嘘。はっきり一言で言えば、銀ちゃんはうざい。




(( 過保護な理由 ))




「お腹空いたなー」

がたたん。
私がちょっと呟いたら銀ちゃんが椅子から身を乗り出した。何その顔、きもい。

「何か食いに行くか?」
「そんなお金あるわけ?」
「あ、そうだな、そうだよな…」

私に言い返されて銀ちゃんはしゅんとなった。おっさんがしゅんってなってる。きもい。これ以上なくきもい。私は銀ちゃんが苦手だったりする。訳あって万事屋に居座ってはいるし、新八くんも神楽ちゃんも大好きだけど、銀ちゃんは違う。苦手。かなりうざいし。今日は新八くんも神楽ちゃんも何故か外出中で、銀ちゃんと2人きり。正直気まずいし、仕事もないなら私も買い物に行きたい。私は静かに立ち上がる。そうすると、ほら。

「どこ行くんだよ」

すかさず声をかけてくる。銀ちゃんのこういうところ、苦手。別に私がどうしようが構わないでしょ。

「ちょっと出かけてくる」
「どこに?」
「…買い物。別にいいでしょ」
「俺も行く」
「何であんたが、」
「お前1人じゃ危ねーだろ。今の御時世何あるか分かんねーから」

銀ちゃんはすぐに父親ぶる。とにかく過保護。苦手。ムカつく。気を遣われるのも腹立つし。

「別に何もないよ」
「そんなことねーよ、危ないんだから言うこと聞け」
「っさいなぁ…」
「反抗期は仕方ないけどよ、銀さんも傷つくんだからもっと優しくしてほしいなー…なんて」
「うざい」
「…」

私がばっさり返せば銀ちゃんは悲しそうにこちらを見つめてくる。その顔もうざい。何で父親ぶるの。私銀ちゃんのこと父親って思ったことないのに。

「…行ってくる」
「待てよ」

反応ないから出てこうとしたら、銀ちゃんがまだしつこく引き止めるから舌打ちをしてやった。

「なに」

苛々しながら聞くと、銀ちゃんはちろちろ視線を泳がせながら呟いた。

「…、夜になる前に帰ってこいよ」







ムカつくから帰らなかった。朝帰り。別にやらしいことした帰りじゃないし、ただコンビニとかで雑誌読んでたら普通に朝になってただけ。でも何となく罪悪感。まあ、いいよね、銀ちゃんが父親ぶるからいけないんだ。

「……」

さすがにただいまなんて言えず、無言で万事屋に入っていく。起きてないだろうなって思ったのに、銀ちゃんはソファで目を血走らせながら腕を組んでいた。こわい。

「…ただいま」
「どこほっつき歩いてたんだ」
「別に」

一応声をかけて部屋を出ようとすると、エリカ様って呼ぶぞと脅されながら後をつけられる。

「ついてこないでよ」
「どこ行ってたんだよ」
「うるさい、寝る、おやすみ」

そう言ってもまだついてくる。あーもううざい。毎回毎回父親ぶって、何様なのよ。父親でもないくせに。私は父親が欲しいわけじゃない。

「ちょっと、出てってよ」
「…」

寝室に入ってもついてくる銀ちゃん。うざいうざいうざい。ムカつくから目の前で着替える。銀ちゃんは気まずそうに視線を床に落とすけど、なら出てってほしい。何なのこのおっさん。

「はぁ…もう勝手にすれば。私寝るから絶対話し掛けないでよね」

着替え終わっても居座る銀ちゃんに舌打ちをして布団に入る。眠い。オールしたのもあってすぐにうとうとした。銀ちゃん、早く出ていけばいいなあ。






起きたらまだいたこのおっさん。一瞬だけ目を開けたけど銀ちゃんが見えてまた目を閉じた。銀ちゃんがこの部屋からいなくなるまで寝たふりしてやる。てゆか何でずっといんの、気持ち悪い。

「ん…」

わざとらしく声を漏らしたら銀ちゃんが動いた、気がする。気配的に。ちょっとしたら私の頭に図々しくも置かれる手。銀ちゃんの手、汚くないかなあ、大丈夫かなあ。

「…名前、」

そんなこと考えてたら銀ちゃんが私の名前を呼んだ。え、何、独り言?でも様子が変。なんか、いつもより熱っぽいっていうか、優しい呼び方。銀ちゃんのこんな声、知らない。

「はぁあ…」

ため息つかれた。銀ちゃんは私の頭を撫ではじめた。私が起きるという可能性を考えないのかな。頭なんか撫でられてたらビンタだよ。それも我慢しながら寝たふりしてたら銀ちゃんは急に私の顔の隣に手をついた。急接近する。やばい、近い近い近い。思わずきゅっと唇に力が入る。

「……すきだ…」

瞬間、銀ちゃんの掠れた声が私の耳元で聞こえた。どくん。心臓が跳ねた。え、待って、ど、どうしたの銀ちゃん、声が色っぽいっていうか変だよ、それに、何その言葉、まるで告白みたい。…え、告白?

「っ、」

ぶわりと変な汗かいた。え?銀ちゃんが私のことを、好き?でも今そう言ったよね?え?え?え?銀ちゃん私のこと、好きなの?待って、じゃあ、いつも過保護だったのは、私に好意を寄せててただ心配してただけってこと?父親ぶってたわけじゃなかったの?わ、わけわかんないよ、銀ちゃん、わかんない。

すっと気配が遠ざかる。銀ちゃんが私の近くからいなくなったらしい。少しホッとした半面、何だか寂しいと思った。いや、寂しいって意味分かんないけど。そしたらもう1回、少し離れたところからため息が聞こえた。

「…何やってんだ俺」

ほんとだよ。何やってんだこのおっさん。銀ちゃんは最後に私の頭をちょっと乱暴に撫でてから部屋を出ていった。その瞬間目を開ける私。

「……何やってんだおっさん…っ」

私はそう呟きながら胸を押さえた。心臓がうるさい。あんなにうざかったんだよ、急にどきどきとかおかしいじゃん、どうしたの私。あんなに父親ぶってて、過保護で、きもくて、うざくて。
でも、娘扱いされてると思ってたから、恋愛対象に入ってるのかって思ったら何だか嬉しい。いやいや嬉しいって何よ私!ああもうわけわかんない。きっと夢だ。もう1回寝よう。

私はそっと布団を被った。




END

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主は無自覚に銀ちゃんが好きで、でも娘扱いされてたからずっと苛々してた、みたいなお話です。ヘタレな銀ちゃんがいけないです。銀ちゃんも銀ちゃんでこの後すごくもやもやしてますきっと。名前様、お付き合いありがとうございました。

20121010
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