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昔からシスコンだったが、まさかここまでとは。彼女はため息をつきながら彼に目をやった。

「ねぇ、離してくれない?」

腰に腕を回し、後ろから抱き締めてくる彼。実の兄とは思えない程の激しいスキンシップだ。頬に頬を擦り寄せられたり、たまにキスされたり。いつもの笑顔のまましてくるから呆れてしまう。彼は今日も相変わらず笑顔だ。

「やーだ」
「いや、やだじゃなくて…」

頭1つ分彼の方が大きいため、彼の顎を頭の上に置かれてしまう。

「神威、そろそろ怒るよ?」
「お兄ちゃんって可愛く言ってくれなきゃ離してあげない」

可愛く強請られても、可愛く返すつもりはない。彼の顎に頭突きを食らわせ、腰に回っている腕が少し緩んだところで素早く逃げる。

「痛ったあ…!」
「神威が離れないからでしょ、このシスコン!」
「じゃあ言うけど、名前はブラコンじゃないの?」
「あっ…当たり前でしょ!」

彼女はドキリと肩を上げる。実際のところ、兄を必要以上に好いている気持ちは彼女にもあるからだ。しかし彼女は、それを上手く隠しているだけで。




(( シスコンブラコン ))




買い物へ行こうと彼を探す。無意識に彼を連れていこうとするあたりブラコンが交ざっているのだろうが。

「神威ー?」

キョロキョロと見回すが、何処にもいない。先程まで鬱陶しいくらいにベタベタと引っ付いていたのに。

「あれ…神威、どっか行ったのかな…」

口を尖らせ、ため息をつこうと腕を組む。はぁ、と息を吐くともやもやとするものが生まれた。

(居なかったら怒るからね…)

どうせなら叫んで怒鳴り付けてやろうと思い、今度は大きく息を吸った。

「かむ――「どうしたのー?」

刹那、後ろからふわりと腕が回ってくる。思わずビクリと身体を跳ねさせ、ドキドキと鼓動を早くさせた。

「ばばばばか!いきなり出てこないでよ!」
「だって呼んでたでしょ?」

にこりと笑う彼は機嫌が良いみたいだ。彼の機嫌が良いときは大抵彼女が絡んでくるということをもう十分知っている彼女は、あからさまに顔を引き攣らせた。

「待って、何でそんな笑顔なの」

未だ後ろから強く抱き締めてくる彼を剥ぐように、絡んでいる腕を掴んだ。

「だって名前、俺がいないと寂しくて何処も行けないってことでしょ?嫌だって言いながら、いつもそうなんだから」
「………」

掴んだ腕を思わず離してしまった。ひどい脱力感に襲われ、塞がらない口からは自然とため息が漏れた。

「そんなわけないでしょ、ただ買い物の荷物持ちさせようと思っただけ」

本当は何と無く連れていこうとしただけなのだが、適当に理由をこじつけてごまかした。何だか寂しかったから、だなんて、口が裂けても言えないからだ。

「ふーん、そうなんだ?」

彼は彼女の心を読んでいるかのような、不敵な笑みを浮かべながら、やっと彼女を解放する。

「じゃあついてってあげる。可愛い妹の為だから」

そんな一言に、思わず顔を背けてしまった。




買い物が終わると、言った通り彼に荷物を持たせた。相当な量を持たせているというのに、彼は涼しい顔でそれを片手で持っている。先程からかなり疑問に思っていたのだが、返ってくる言葉が何と無く予想できるから敢えて聞かなかった。しかし暫くそれを続けられると、ツッコまないわけにはいかなくなってくる。

「…ねぇ、バランス良く両手で持てば?」
「冷たいなぁ。そしたら名前と手が繋げないでしょ」

(やっぱり…)

予想通りすぎてため息が出る。第一繋ぐだなんて一言も言っていないというのに。

「大丈夫、繋がないから安心して両手で持って」
「片手で持てるんだから良いよ。俺が勝手に待ってるだけだし、繋ぐか繋がないかは名前の自由ってことで」
「………」

そこまで言われてしまうと返す言葉は無い。少し考えるように宙を見詰めてから、ぼそりと呟いた。

「何でそんなに繋ぎたがるの…」
「だって俺、シスコンらしいから」

にこり、と笑顔を見せられる。一瞬トクンと心臓が跳ねたが、それを悟られたくはない。赤くなりそうな顔を必死に背けながら、わざと嫌々という様子を見せながら空いている彼の手をそっと握った。

「家まで、少しだけだからね」
「あれ、顔赤「うっ煩い!」

直ぐに気付いてしまったが、これ以上言ってしまうと手を離されるかもしれない、と彼は口を閉ざす。結局のところ、彼のシスコンと同じくらい彼女だってブラコンなのだ。




END

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お兄ちゃんが欲しいです。神威さんが欲しいです。神威さんと神楽ちゃんの仲が悪いので今回はめちゃくちゃ仲の良い兄妹にしてみました。でもやっぱり神威さんは神楽ちゃんのものかな…なんて思ったり。名前様、お付き合いありがとうございました。

20120616
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