(1/1)




ぱきぱきと先程から室内に響く音。ジャンプを捲りながらポッキーを食べているのだ。彼女は彼をじっと睨んだままだ。

「で、どうなの?何か言ったら?」
「だぁーもう。何もねえって」
「嘘だよ、絶対何かあったもん!じゃあ何で2人共避けるの?!」
「知らねぇよ、そんなに怒るなって」

何故2人が喧嘩をしているのかというと、少し前のこと。
彼らが付き合っていることは、実は万事屋メンバーには内緒にしていた。内緒にしていたと言うのは大袈裟だが言うタイミングを逃してそのまま続いてしまったというだけのこと。今更言わなくても良いことだし内緒にしているというのは暗黙の了解、という流れになったのに。今朝彼女が万事屋に来ると神楽と新八が異様ににやにやしながら出ていってしまったのだ。まるで彼らを2人っきりにするように気を使っているような態度だった。彼女はそれが嫌だった。仲の良い万事屋が気を遣い合うようになってしまうなんて。それで彼に問い詰めた、ということだ。しかし彼は先程から知らんぷりである。




(( 強制ポッキーゲーム ))




ぱきぱきと続く音を聞くと、もうため息が出てくる。彼は知らないの一点張りだし彼女自身も疲れてしまう。諦めて彼の隣へ座ると直ぐ。

「お腹空いた」
「あぁ、そう」

ぱきぱきという音が途切れた。彼はこちらを向き、自分の口に咥えているポッキーを彼女に差し出す。

「食う?」
「…普通に頂戴よ」

ぶすっと呟いたのに彼は彼女の頬を両手で包み、ほぼ強引に彼女の口へと突っ込む。ポッキーの分だけの距離なので当然顔が近い。急に近距離になり、彼女は動揺して顔を背けた。

―パキンッ…

「ちょ、ちょっと…っ」

もぐもぐと口を動かした後彼を睨む。

「あーあ、折っちゃだめなゲームだろ」
「何で急にポッキーゲームなの!」
「いや、食ってたから」

彼女に折られた残りのポッキーを口に入れる。

「じゃあもう1回挑戦〜」
「や、もういい…!」

人の話を聞かないのも悪いところ。もう新しいのを咥えて「ん」と出してくる。ふるふると首を横に振るのに、早くしろと目で訴えてくる。促されたので渋々、先端だけかじってすぐに離れた。

「ちょっと名前ちゃん、何照れてんの」
「て、照れてないっ」

彼はにやにやと笑って彼女の顎を掴む。

「ならちゃんと出来るんだよなァ?」
「…っ、出来るし…!」

ぐ、と下唇を噛んだらまたポッキーを咥えさせられた。それから逆端から彼がぱきぱきと近付いてくる。彼女は未だ咥えているだけなのに、顔はすぐそこにあって。

―パキンッ

真っ赤な顔でぎゅうと目を閉じたら、直後にポッキーが折れた。目を開いてみると少し頬を赤くした彼。

「ん、だよ…出来んじゃねえか…」
「え、何で銀ちゃんが照れ、んぐっ」

そう言えば、ますます赤くなる。しかし最後まで言わせないように唇を重ねられる。口止めだったため一瞬で、離れると彼は睨んでくる。

「照れてねーよ」
「え、だって、」

顔赤いじゃん、と言う前にまた遮るように塞がれた。今度はちゅー、と長い時間。暫くしてから、彼女が彼の肩をトントンと叩く。離れるとお互い少しばかり紅潮している。こういった行為は本当に久々だったから。

「ガキが2人もいたんじゃ、こーゆーこと出来ねぇもんな」

にっと笑われたら思わずつられて笑ってしまった。

「もう、ばかじゃないの」
「あいつ等が帰ってくるまで、少しくらい良いだろ」

そう言って、またもう1度。








「ただいまー!」

2人が元気よく帰ってきた。彼女は咄嗟に彼から離れ、彼もまた焦りを隠すかのように頭を掻きながら席を立つ。すると、神楽がにやにやしながら彼にあるものを見せた。

「銀ちゃん、買ってきたヨー!」
「おう、早かったじゃねえか」

内心もっと遅ければ良かったのに、と呟きながら、新八と神楽の許へ行く。3人ににやにやと見られ、彼女は変な汗をかいた。

「な、何…?」
「あのなァ、名前。こいつ等がにやにやしながら出てったのは、これの為だ。俺が買いに行かせたんだけど」
「勿論、着ますよね?」

新八が神楽にアイコンタクトをとると、神楽がそれを広げる。こういう時ばかり息ぴったりなのはこちらとしてはいい迷惑だ。

「…ちょっと、何それ…」

あるものとは、目を見張るもの。誰の趣味だと問い詰めたくなるのだが、そういえばついさっき彼が買いに行かせたと言っていたことを思い出し、身体を震わせる。

「そんなもの、着ると思ってんの…?」
「良いじゃねえか、1回くらい。色気が足んねぇんだよ、万事屋には」
「これが普通だよ!」

胸元が開きそうなくらい緩い衿元、胸の少し下で結ばれた大きいリボン、透けそうなシフォン生地になっている袖、ぎりぎりの丈でレースを付けて終わっている裾。こんな大胆な着物を着ているのは、花魁の人や風俗の人くらいではないかと思ってしまう程。

「えーでも名前ちゃん、似合うと思うヨー?」
「そうですよ、少し着てみたらどうです?」
「何か新八が言うと厭らしく聞こえんだよ」
「何でだよ!」

そんなやり取りを横で聞き、彼女は呆然と宙を見詰めた。

(銀ちゃんとのことバレてなくて良かったけど、これはひどい…)

チラリとその着物を一瞬見てため息をつく。

(2人っきりになる方法、あれ以外にもあったでしょう…)


結局、その服はさっちゃんに回ったとか回ってないとか。




END

--------------------

1日遅れました遅刻ごめんなさい!11月11日はポッキーの日でしたね、銀ちゃんに真顔で「俺のポッキー咥えてください」と言わせる予定でしたが教育に悪いのでやめました(笑)
名前様、お付き合いありがとうございました。

20111112
(  )

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -