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シュークリームを口いっぱいに頬張り、幸せそうに噛み締める。彼はそんな彼女をじっと見詰めていた。
「美味そうに食うよな、お前」
「だって美味しいもん」
甘いの好きだしね、ともう一口。よくカップルがやる、『ったく、口にクリーム付いてるぜ〜』というのがやりたくて先程から彼女がクリームを付けるのを待っているのだが、そんな隙も無い。彼女は全部自分で舐め取ってしまうから。
(( 噛みたい唇 ))
彼は詰まらなそうに口を尖らせる。
(いやぁ、やだね、甘ったるいもんを独り占めたァ)
普段の自分の姿なんて棚に置いてため息をついた。そうこうしていたらもう最後の一口。
「んー美味しかった!」
「あァそうかい。結構なことだ」
チラリと目をやるが、やはりクリームはついていない。彼女とそんな展開を期待した自分が馬鹿だった、と脱力感。すると彼女が顔を覗き込んできた。
「銀ちゃん?どうしたの?」
「何でもねぇよ」
悔しくなったから彼女の唇を指で摘んだ。彼女はキョトンと目を丸くする。
「何、クリーム付いてた?」
「………」
(付いてたらこんなガッカリしねぇよ)
思わずフッと笑ってしまう。
「あぁ、すげぇ付いてる」
「え、嘘、取って」
彼は眉を顰めた。それから小さく呟いて。
「言ってくれるじゃないの」
「え?」
かぷ、と彼女の唇に噛み付いた。何度も何度も噛んだと思えば、今度はゆっくり舌で唇をなぞる。
「は…っ」
甘く漏れる息。
(そういえば強弱つけられんの好きだっけ?)
またかぷりと甘噛みをして、ぐりぐりと歯を宛てる。少し痛い位に噛んでから、彼女の口の中に優しく舌を侵入させた。
「んっ…ん、ぅ、」
舌と舌が擦り合わされる感触を愉しみながら、彼は薄く目を開く。視界いっぱいに、苦しそうにきゅうと目を閉じた彼女の顔が映った。それでも気持ち良さそうにしがみついてくる彼女が愛おしくて。
「ん、は…っ、あ、銀ちゃ…っ」
「どうしたー?」
唇を離しその代わりに手を服の中へ忍び込ませると、直ぐに待ったの声が掛かった。
「ちょ、ちょっと、ここじゃ…あ、ん」
「煩ェ」
再びかぷりと唇を噛む。
(そんな甘い声聞いて我慢出来ると思ってんのか…)
また反論しそうな口をしっかり塞ぎ、彼は彼女に脚を開かせた。
END
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糖分も甘い展開ももらえなかったのだからせめて身体をもらってしまおう、という魂胆です。名前様、お付き合いありがとうございました。
20111103
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