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※オリキャラが出てきます




あんなに笑ってあんなにふざけてあんなに優しくしてあんなに楽しそうで。マカなんか…マカなんて。
彼女は今日も、ずっと下唇を噛んでいた。




(( 許せない壁 ))




「ソウルー、今日は焼きそばが良い!」
「はぁ?!今日の当番は俺じゃねえっつーの。つーか昨日もお前サボっただろ?」
「良いじゃん、ソウル上手いし」
「そう…か?仕方ねーな」
「やったぁ!」

(何アレ…)

彼女は冷たい目でその光景を目にしていた。そこには笑い合うソウルとマカ。確かに2人はパートナーだ。だから一緒に住むのは当たり前なのだが…。

(彼女はあたしでしょ…?)

彼女には葵というパートナーがいる。パートナーとはそういうものだし、ましてや死神学校で出逢った2人はもうパートナーを作り終えていた頃だから仕方ない。

(でもソウル、マカに優しすぎだよ…)

でも言えない。言いたくない。優しい優しい彼のことだ、そんなこと言ったらマカと距離をとりはじめるだろう。そんな気まずい中、魂の波長が合うはずがない。彼はデスサイズになりたがっている。自分はできないが、マカなら彼をデスサイズにすることが可能だ。
だからこそ。

(我慢するしかないんだ…ソウルのために)







―放課後

「ソウル、帰ろー」
「おぉ、ちょっと待ってろ」

マカがまた彼を呼ぶ中で、彼は彼女の許へ駆け寄った。

「なぁ、今日暇か?」
「えっ…あ、うん」

突然のことに驚きつつ、素直に嬉しかったので笑顔を見せた。

「そうか。じゃあ夜お前ん家行くから」
「ああ、うん…ッはあ?!」

(危ない、危うく流されるところだった…!)

彼女はブンブンと首を振り、やっぱダメ!と訴えた。

「何でだよ」
「え…、あの、」

(だって絶対、マカがついてくるもん…)

彼女は視線を泳がせた。

(家にまでわざわざ見せ付けに来るなんて絶対嫌…!)

しかし言えない。彼はフゥ、と息を吐いて、突然彼女との距離を縮めた。そして耳元でただ一言、こう囁いた。

「絶対行くから、待ってろよな」

低い声が鼓膜を、身体を、心を、全てを震わせてゾクッとする。そんな光景を葵は面白くなさそうに見詰めていた。







―夜

何もすることなくソファに寝転びテレビを眺めていた。

(ソウル、まだ来ないなぁ…)

チラリと時計に目をやるともうすでに9時半を過ぎている。

「葵、ココア作ってー」
「ったく、お前は…」

隣に突っ立っていた葵に声をかけると、彼はすぐにココアを持ってきてくれた。

「…ありがと」
「お前さ、」

ココアを渡すと同時に、葵は彼女の隣へ腰を下ろした。

「最近元気ねぇじゃん?何かあったの?」
「え?…別に?」

内心ギクッとしながら葵から顔を背ける。

「おい、こっち向け。お前をそーゆー風にしてんのは、ソウルじゃねえのかよ」
「…!」

葵は彼女の顎を掴み、自分の方を向かせる。目線より高い位置にある葵の顔を見上げると、彼は伏せ目がちに彼女を冷たく見詰めていた。

「お前、俺が何も気づかないとでも思ってんの?」
「え、う…、」

(葵、どうしたの…?)

さすがに不審に思うと、ちょうどインターホンが鳴る。

―ピンポーン…

「あ、ソウルかな?」

話を逸らそうとしながらソファから起き上がろうとする。しかしそれは葵によって遮られ。

「ッん…?!」

突然唇に重ねられた彼の唇。彼女の手首を掴み、寝転ぶ彼女に覆いかぶさるように乗って激しいキスをした。酸素を取り込もうと開けた口から、彼の舌が侵入する。

「ん、んん…っ、待っ、はぁ…ッ」

本当に激しいキス。ソウルとだってしたことのないような。

―ピンポーン…、

もう一度インターホンが鳴った。出たいけれど葵が退いてくれない。どんなに抵抗しようとも葵の手はしっかりと彼女の手首を捕らえているのだから、どうすることもできないのだ。

(やだよ…ソウル…!)

首を横に振って離れようとしても離してくれず、彼女は悔しさから涙を流した。
その時。

―バァンッ!

部屋のドアを突き破る音が聞こえて、埃が立ち上がる中紅い目を鋭く光らせたソウルがこちらを睨んでいた。その音に葵はやっと離れ、唇と唇の間には透明な糸がかかって切れる。

「…触ってんじゃねえよ、俺の女に」
「あ?こいつが泣きそうだったから慰めてやってただけだろ」
「とか言って泣かせたのはお前だろ」

彼はいつもの低い声をさらに低くして、ただ葵を睨みつけながらこちらへ進んでくる。案の定ついてきたマカはいつもと雰囲気の違う彼に恐怖を感じたのかドアのところへ座り込んでいるだけである。彼は葵が手の届くところまで歩み寄ると、いきなり葵の胸倉を掴んだ。

「お前、死ぬ覚悟はできてんだろ?」

そう言う彼の腕は、もう刃と化していた。

「ハッ、よく言うぜ。てめぇのせいで名前は毎晩1人で泣いてたってのによ」
「は…?」

やっとここで彼が彼女に目をやる。涙を浮かべた彼女はどこか不安気に2人を見詰めていた。

「…っ」

彼はギリッと歯を食いしばると、刃を解いて拳で彼を殴りつけた。

「っ、痛〜…」

口の中が切れて血が出ている中、彼は隣にいた彼女の腕を掴み、無理矢理立たせて引っ張っていく。

「ちょ、どこ行くの?!」
「うるせぇ!」

部屋を出て家を出てずんずんと進んでいく。腕を掴む手があまりにも強すぎて彼女はその痛みに顔を歪めた。

「ソウル…!待って、待って!」
「………」

彼女が必死に訴えればピタリと足を止めてこちらを振り向く。

「俺のせいで泣いてたって、何だよ」
「え…、な、何でもないよ…?」

(言えない…ソウルのために)

「あいつには言えて、俺には言えねぇのか?」
「え…だって……」

チロチロと視線を泳がせると、彼は切なげに目を細めてから彼女を抱き寄せた。

「ソウル…?」
「俺が知らないのに、あいつが知ってる」
「え?」
「ムカつくんだよ!」

ぎゅうぅっと腕に力がこもり、同時に彼女の胸も締め付けられた。

「俺が1番でいたいってのは、わがままかよ…」

それは彼女が彼に対して思っていたこと。マカより自分が1番でいたい、と。

「ソウル…、」

そっと背中に腕を回し、その胸に顔を埋めた。

「だってね、マカにべったりだもん、ソウル」
「は?」
「それで…妬いてただけなの」
「な、んだ…」

ハァ、とため息をつかれ、ふと腕の力が緩んだ。

(やっぱくだらないよね…)

そう思えば。

「焦らせんなよ…良かった」
「え…?」
「お前、葵にとられたかと思った」
「そんなこと…、」
「ないと思いてぇけど。…余裕ねぇんだよ…」

そう言った彼の声は微かに掠れていて。こんな時に不謹慎だが想われていると思うと口元が緩んだ。

「ソウル、大好きだよ?」
「…ああ、知ってる」

俺も、と付け加えてから、彼は葵とのキスを消毒するかのようにいつもよりはずっと深い甘い甘いキスをした。




END

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何度アニメを見返してもハマります。ソウルは嫉妬深いと可愛いと思います。名前様、お付き合いありがとうございました。

20111102
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