(1/1)

※ザンザス×モブの子が主人公




やっと買い物が終わり、急いで帰ってきたのに。

―ガチャッ

「スク、名前は?」
「ゔぉぉ、今寝かせたところだぁ」
「え?…ああ、そう」

先程彼女の子である名前が泣きはじめ、何かと思えばお気に入りのおもちゃが壊れたとのこと。やっとの思いで買ってきたのにスクアーロは子供の扱いが上手いらしく、名前はもうすやすやと寝息を立てていた。

「ほんとスクがいてくれて助かったー…なんかスクの方がお母さんって感じ」
「そんなことはねえけどよぉ…お前、」

スクアーロはボソリと耳打ちした。

「あんまり俺を褒めるなぁ。あいつが後々怖ぇだろぉ」
「ん?」

あいつ、と言いながらスクアーロが視線を飛ばした先には、彼女の夫であるザンザスが不機嫌そうに座っている。

「ああ、ごめんごめん」
「おぉ。じゃあ俺は行くから、また何かあったら呼んでくれぇ」

それほど彼を恐れているのか、スクアーロはそそくさと部屋を出て行ってしまった。途端に室内は静かになる。未だぶすっと顔を反らしている彼に苦く笑い、彼女は彼の方へと近付いていった。

「ザンザス−?」
「……」

完全に拗ねている。それもそのはず、自分の子供が自分には懐かないくせに他の男に懐いているだなんて、気分の良いものではない。彼の前で立ち止まると、鋭い視線を向けられた。

「なあに、怒ってるの?」
「うるせぇ」

刹那、ぐいっと手を引かれ、その反動で彼の胸へと顔を埋める形となってしまった。

(でも否定はしないんだ…)

ほんと可愛いなぁ、とクスリと笑うと、2人のいつもの雰囲気が戻ってくる。彼の膝の上に座り、その腕に抱かれた。彼女は彼の胸に顔を埋めるだけだが、幸せな気持ちに満たされる。
暫くしてからぐいっと顎を掴まれ、噛み付かれるようなキスをされた。少し機嫌が悪い所為か、行動一つ一つが強引で荒っぽい。しかし唇をなぞる舌は優しく、彼女はふるっと身体を震わせた。だんだん力が抜けていき、頭がぼーっとしていった、その時。

「…う、うぁ〜…っ」

2人を裂いたのは名前の泣き声。やっと目を覚ましたのだが、周りに誰も居なくて驚いたのだろう。ぱっと離れると余韻もなく彼女は名前の許へ駆け寄った。

「大丈夫だよ、ママはここにいるからねー」

にこりと笑い掛けながら泣いている名前を抱き上げると、名前は途端にピタリと泣き止んだ。彼女は名前を抱きながら彼の許へ戻り、彼の膝の上に降ろす。

「見て、この口。安心するとお腹が空いちゃうのかな、何か欲しがってる口なんだよ」

名前は下唇を噛むようにして、もぐもぐと口を動かしていた。

「ちょっと名前のこと見ててくれる?ミルク持ってくるから」

彼女はふふっと笑い、部屋を出ていく。名前と彼の2人っきりだ。彼は何も言わず、膝の上に名前を乗せたまま名前を眺めていた。そしてぎこちなく遠慮がちに名前の頭を撫でてみる。名前はきょとんとした顔をした後、すぐに笑顔を見せて。

「ぱぱ、ぱぱ」
「……」

彼は動揺し、思わず名前から手を離す。名前は声を上げて笑い、彼に手を伸ばそうとした。

「ぱぱー」

両手で彼の親指をやっと握る。彼は黙ったまま、嬉しいとも幸せとも思えるような、それでも無表情のまま名前を見詰める。

「パパー、名前は泣いてないー?」

その時、走って戻ってきた彼女が扉を開ける。そこには幸せそうな親子の姿。

(あ、ザンザスがすごく嬉しそうな顔してる…?)

表情には出ていない筈なのに、彼女は一瞬で気付き、嬉しくなった。

(良いパパになりそうだよね)

にこにこと笑うと、もう少し2人の時間を過ごさせてあげたくて、彼女は静かにドアを閉めた。




END

--------------------

あんな強面の人がパパだったらきっとびびって懐かないだろうと思います。これも2年前くらいのです。でもザンパパ設定はわりと好きです(笑)
(  )

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -