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もうそろそろ寒さが厳しくなってくる季節へと近付いてきた。彼女は寒くて寒くて堪らないというのに。

「ちょっとフラン、まさか走るんじゃないでしょうね」
「ゲロッ」

今日は彼と2人の任務だ。寒くてマフラー、手袋を完全守備として使用しているにも関わらず、まだ寒がっている。

「何で走っちゃだめなんですかー…」
「走ると風がきて寒いでしょ!?だめ、絶対っ」
「それじゃあ任務になりませんー」

ぶすっと口を尖らせた彼を置いて、1人で黙々と足を進める。

「ちょっと、センパイー」
「何よ」
「そっちじゃなくて、こっちですよー」
「…先に言いなさいよっ」

自分の方向音痴さを悔やみながら、彼に言われた方向に歩き出す。黙々と歩くのだが、彼は後ろから文句ばかり。

「煩い、もう!何なの」
「だって、これじゃあ任務完了はまだまだですよー。あんまり遅いとロン毛隊長が心配しますしー、うざいレヴィさんが助けに来たとか言って、足手まといに来ますよー」
「…うん、そうかも」

(でも絶対走んない!)

びゅう、と風が吹き、彼女は顔を顰めた。手袋をしているくせにポケットに手を突っ込み、身震いしている彼女。彼は軽くため息をついた。

「センパイ、外側からあったまるのと内側からあったまるの、どっちが良いですかー?」
「え?どーゆー意…」

言い終わる前にキスをされる。振り向き様によくこんなに上手くできるな、と頭の隅で冷静に思いながら、慌てて彼を引き剥がそうとポケットから手を出そうとするものの、手袋が嵩張ってポケットに引っ掛かる。なかなか手を出すことの出来ない彼女を内心笑いながら、彼は彼女の腕を掴んで無抵抗の状態にした。
唇を舌でなぞると、ピク、と身体が引く。彼はにや、と笑って彼女から離れた。

「口、開けて下さいー。深いのできないじゃないですかー」
「しっ、しなくていいっ」

結局何も抵抗できなかった彼女は、ぱくぱくと口を開く。羞恥で顔が真っ赤になったのが分かり、彼に気付かれないように顔を背けるが、もう遅い。

「あれ、顔赤くなってないですかー?」
「なってない!アレよ、ちょっと暑いのっ」
「そうですかー」

にやにやした彼は、遂に言わせたと達成感に満ち溢れた顔。

「じゃあ、もう走れますよねー?暑いんですからー」
「………最低…」

後輩のくせに、と呟くと、どうせ可愛くない後輩ですよー、と返された。

「やだ、でも寒いから歩く」
「まったく、困ったセンパイですねー、本当に」

でもその先輩に、文句を言いながら付き合うのも後輩の役目。

(まあ、ミーは少しでも長く居れるなら 良いですけどねー)

2人は、ゆっくりと歩き出した。




END

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