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いつものようにお菓子を口に含みながらテレビを眺めていると、彼が隣に座ってきて、ふと彼女の頬を摘む。

「………」
「………」

彼女は一瞬眉を顰めたが、何も言わずにテレビを見続けた。彼は1回彼女から手を離し、そしてつんつんと、今度は軽く突いてみる。それにも無反応な彼女に気を良くしたのか、彼は本格的に触りはじめた。ふにふにと、何度も何度も。手の平で触ってみたり、摘んでみたり。暫くの間放っておいたが、さすがにテレビを見るのに気が散って仕方がない。

「何、白蘭?」

遂に聞いてみた。

「ん、何が?」
「いや、何がって…さっきから、これ」

未だふにふにと触れる彼の手を指差す。彼はいつものように ふふっ、と笑うと、やっと手を離して目を細めた。

「だって名前チャン、何か気持ち良くって」
「ん?」

すると今度は二の腕を掴まれ、気になっているお肉を摘まれる。

「ちょっと、白蘭!」
「柔らかくてさ、すごく気持ち良いの」
「なっ、」

言葉を遮られ、ニッコリと笑われる。

「…喧嘩売ってんの?」
「んー、何が?」

ぷくーっと頬を膨らませて少し拗ねたように顔を背けた。

「どうせぽっちゃりしてますよーだ」

気にしているのにそこを言われるなんて。彼女にとっては結構なダメージである。しかし彼はニコニコと笑って彼女の頭を撫でるだけだ。

「あはは、可愛いなぁ。名前チャンのそーゆーとこ好き」
「むー…」

(白蘭のばかぁ…)

口を尖らせると、その唇を指で摘まれる。

「柔らかくてマシマロみたい」
「え」

それから不意打ちのキス。ちゅ、と優しく、額へそっと。

「な…っ、今度は何っ」

カァァッと顔を赤くして額を押さえると、次はぎゅうと抱きしめられた。

「でもマシマロよりも、ずっと好き」

いつもより少し低い声で、そう囁く。彼女は再び赤面した。

「もう…何なの……」

動揺しながらも彼の背中に腕を回し、彼女もまた言う。

「だって、マシュマロ 大好きでしょ?」
「うん、大好き」
「それでも私の方が好きなの?」
「うん。当たり前でしょ」

そんな言葉に、彼女は少し嬉しくなりながらもため息をついた。

(白蘭は今日、とてつもなく機嫌が良いってことかぁ…)

こんなに素直なんて、と心の中で呟く。

「名前チャンは言ってくれないの?」
「はい?……………ああ」

それから彼のとんでもない一言。極度の恥ずかしがり屋である彼女が言えるはずもない言葉を求めてくる。彼女はあからさまに視線を逸らし、彼から手を離した。

「あれ、名前チャン?」
「分かってるくせに…」
「うん、分かってる」
「じゃあ聞くなっ」

赤い顔で、キッと睨む。そんな表情さえ愛しいと思ってしまう彼は、少し真剣な顔を見せた。

「でも、名前の口から聞きたい」

いつもの細い目がしっかり開かれて、真剣な口調で言われる。頬に手を添えられ、低い声で立て続けに。

「名前、好き。好きだよ」
「う…」
「名前も言って?」
「うぅ…」

みるみるうちに頬を赤に染めていく彼女。彼はついに両手で彼女の頬を包み込んだ。チラリと彼を見ると、その言葉を待っているようにじっと見つめている。彼女は深くため息をついた後、観念したかのように口を開いた。

「私だって白蘭のこと――…」


その言葉に、彼は満足気にニッコリ微笑んだ。




END

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今回は甘々にコメントつきで投票して下さった方へ書きました。私は白蘭さんは裏表激しい人間だと思うんですよ。だから「名前チャン」から「名前」に変わる瞬間とか、あの笑顔が消える瞬間とか、とても好きなんです。皆様のリクエストにできるだけそえるように、これからも頑張っていきたいと思います。これからもこういった企画をしていきたいと思いますので、これに懲りずにまたご希望をお聞かせ下されば幸いでございます。

2010.09.05.
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