(1/1)




むっすぅぅ…と顔を顰めてその2人を思いっきり睨む。先程からそれをずーっとやっている…が、効果はまるでなし。

(何であんなに楽しそうなのさっ)

そう、彼女の視線の先には沖田と神楽がいたのだった。普通なら彼女もこんなに怒らない。ただ、神楽に対しては違う。たまに会ったりすればすぐに彼に突っかかってきて、彼もそれにノッてしまうから最悪だ。本人同士はきっと喧嘩をしているつもりなのだろうが、第三者から見ればただの戯れ合いだ。彼は彼女の存在を忘れているかのように神楽と言い合いを繰り広げていて、彼女が怒るのも当然である。さらに、ドSと知られる沖田も、彼女だけには優しい一面もある。だから言い合う機会もあまりなく、神楽のそれが羨ましくもあったのだ。しかし、そんなことを言えるはずもなく、彼女はもう20分も2人を眺めているのであった。




(( 独占欲 ))




「おい、名前」

「…何」

視線は2人に向けたまま、隣からひょっこり出てきた銀時に不機嫌そうな声で応える。

「あれに怒ってんのかよ?」

「銀ちゃんには関係ないでしょ」

「はぁ…ったく、怖い怖い」

銀時はわざとらしくため息をついてから、軽く頭を掻いた。

「俺ァ、一途な男だぜ?」

(またですか…)

彼女は呆れたようにやっと銀時へと視線をうつした。

「会う度口説かないでよ」

「うわ、バレてた?」

そう言ってからフッと口元を緩めた銀時は、ポンポンと彼女の頭を撫でる。

「心配すんな。あいつらはそんなんじゃねえし、神楽にあんなドSな奴、銀さんは絶対認めません!」

「何でお父さん気分?」

今日は新八が不在のため彼女は軽くツッコんでから下を向いた。

「…分かってるもん、そんなこと」

(でも嫌なの…)

大人気ない自分にため息が出る。何だろうこの劣等感…と彼女はますます泣きたい衝動に駆られていく。見かねた銀時が慰めようと彼女の肩を抱いた時。

―チャキッ

トン、と銀時の背中に それが当てられる。それが何か一瞬で分かってしまった銀時はダラダラと嫌な汗をかく。

「そ、総一郎くん…?」

「総悟ですぜ、旦那」

振り返ればやっぱり、刃を光らせた彼が薄笑いを浮かべてそれを銀時の背中に突きつけていた。

「ちょっ、待て待て待て!俺ァまだ何にもしてねえって!」

「じゃあ今から何をしようとしてたんでィ?」

彼はムスッと口を尖らせると、刀を鞘に納めてから彼女の腕を掴む。

「こいつァ俺の女なんで、手ぇ出さないで下せェ」

「なっ」

カァッと顔を赤くして下を向く。銀時はやれやれと首を振り、銀時の方は銀時の方で神楽の腕を掴んだ。

「だったら余所見すんじゃねェよ。こいつ悲しませたら俺がもらうぞ。…おい神楽、帰ろうぜ」

「触んないで、諦めの悪い男ネ。まじキモいアル」

しかし神楽はその手を振り払うだけである。

「きも…っ、おいおい反抗期かァ?」

「うっせーよ、ジジィ、アタシ先に帰るアル。絶対ついてこないで」

「ちょっ…何なの?!俺まだお兄さんとか呼ばれたいんですけど、コノヤロー!おい、ちょっ、」

2人は騒がしく帰っていく。それを目で追っていると、彼が顔を近付けてきたので遮られた。そのままチュッ、と唇にそれが当たり、彼女は思わず目を見開いた。

「他の野郎を見てんじゃねェや」

「なっ、見送るぐらい 良いでしょ?!」

外でキスしてしまった、ということが彼女の羞恥心をさらに煽る。大体、と彼女は言葉を続けた。

「総ちゃんだって、その…」

「何でィ?」

「あ、いや…」

ただ、言おうとすればするほど言葉が出てこない。本当は神楽のことを言いたいがプライドが邪魔してしまって遂にそっぽを向いてしまう。

「な、何でもないっ」

「…はっきりしなせェ」

はぁ、とため息をついてから、彼は彼女の背に手を回した。そのままぎゅう、と彼の腕の中に包まれる。

「え…、」

状況が飲み込めないが、とりあえず彼女は彼の胸に顔を埋める形になっていた。

「総ちゃん…?」

「俺ばっかでずりィや」

「…?」

その言葉にますます首を傾げることになる。

「何、どーゆーこと?」

「…好きなんでさァ。本当に、余裕がないくらい」

「っ、何 突然…?」

ぎゅう、と腕の力が強まり、少し苦しいくらいに抱きしめられる。

「心が狭くてすいやせん。ただ旦那と話してただけでイラッとしちまって…かっこわりィや」

(……!)

彼女は少し躊躇いながらも彼の頬に手を添えた。

「私もだよ?…神楽ちゃんとばっかり話してるんだもん…」

「っ!」

少し驚いた顔をするが、彼はすぐに赤面した。

「やっぱずりィや…」

そしてぎゅうっと再び抱きしめられ、耳元で囁かれる。

「どこまで俺を溺れさせれば気が済むんでィ…」

それから2人は、もう1度キスを交わした…。







彼の腕は未だ、彼女の背中に回っていた。

「ち、ちょっと総ちゃん…もう私、恥ずかしくって死にそう…っ」

「別にお前は良いだろィ。俺ァ顔が丸々見えてるんですぜ」

皆がチラチラと彼等を見ながら通る公園で、彼等はお互い離れるタイミングを窺っていた。




END

--------------------

お友達記念に私の永遠の師匠である瑞稀様の旦那様を書かせていただきました!…が、すみません…!沖田さんが全然ドSじゃありません…本当に申し訳ないです…旦那様であればフリーと言っていただきましたが、沖田さんがドSじゃないやつなんて、きっと想像してなかっただろうな…と。(あれだけ語っておいて本当に申し訳ないです…)
師匠のような文章を書けるようになりたいです、切実に。これからもサイト友達として、また師匠として、仲良くさせてもらえたら幸いです。
(  )

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -