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キャバッローネファミリーと、その同盟ファミリーであるリグレルファミリー。その2つのファミリーのボスが、この1つの部屋に集まっていた。

「…じゃあ、これで話はついたな」

「あぁ。名前、この後は暇か?」

「は?」

やっとけりがついたところで、彼は大きな伸びをする。それと同時に発されたものに、そのボスさんは目を丸くした。

「久々にデート、しようぜ」

「…!」

名前がカァッと顔を染めたのを“OK”の返事と見做し、彼は部屋から追い出していたロマーリオを呼ぶ。

「ロマーリオ!おい、ロマーリオ!」

「どうした、ボス」

絶対に話し合いを邪魔するなと言ってあったせいか、部下達は意外にもはるか遠くに待機していたようだ。彼はそいつらにニヤリとし、鼻歌でも歌い出しそうなくらいの声で、こう告げた。

「ちょっとあいつと、飯でも食ってくる」




(( 秘密の恋 ))




勿論彼等が付き合っているなんて誰も知らない。そのせいか快く送り出してくれた部下達を置いて、彼は彼女を連れて街へ向かう。人が多いせいか少しはぐれやすいため、彼は彼女の手をしっかりと握っていた。
それにしても、人が多い。それなのに皆が彼を振り返る。

「こんにちは」「やぁ、ディーノ」

皆それぞれだが、ほぼ全員と言っていいほどの者達が彼に挨拶をしてくる。それだけで彼がこの街でどれだけ好かれている人物かが分かってしまうのだ。
さらには、こんなことも。

「ディーノ、その隣の子は、妹?」

「「………」」

それにあからさまに顔をしかめるのが1名、苦笑いを浮かべることしかできないのが1名だ。

「いや、こいつは…、」

「もういい。俺、先に行く」

「え、ちょっと、名前!」

この人ごみの中、彼女はプイッと背中を向けたと思ったらすぐに消えていった。身長が145pしかないくせに、1人で歩いていたら迷子に見える。加えて彼女は童顔だ。本来の16歳、という年齢よりはるかに下に見られ、それをコンプレックスとしている彼女にとって、先程言われた一言は消えてしまいたいくらいにショックだったのかもしれない、と彼は思いはじめる。

「悪い、また後でな」

彼はそいつにそう言って、消えていった彼女を追った。



裏道に入り、人混みから離れた。先程言われた『妹』という単語が頭の中をぐるぐる回る。それでなくとも彼とは歳が離れているのに、自分の容姿のせいで兄妹にまで見られてしまうのだ。

(もう帰りたい…)

自分の情けなさに涙が出てくる。大人の女性になりたいのに。彼と釣り合う素敵な女性になりたいのに。自分は子供で、女の子っぽい言葉遣いもできないし、釣り合うとかそういったカケラもない。どんどん自分に嫌気がさして、どんどん暗い気持ちへなっていく。

「ディーノ…、」

微かに彼の名を口にする。するとその瞬間、彼女の前に大きい影ができた。それが何なのか確認しようと顔を上げようとしたが、その前にぎゅう、と抱き締められ、いつもの心地好さ、温かさ、香りが、彼女を包み込んだ。

「…ディーノ?」

「勝手に消えんなよ。心配しただろ」

「…ごめん、」

彼女がぎゅう、と抱きしめ返すと、彼は不意にちゅ、と軽くキスをした。

「何で泣いたんだ?」

「え、…泣いてないし」

彼から顔を背け、ゴシゴシと袖で涙を拭うと、彼はそんな彼女の顔を両手で包み込み、優しく自分の方へ向かせる。

「悪い。…俺が、ファミリーの皆に公表できたら良いんだけどな」

「それは仕方ないだろ。…俺がディーノに釣り合う女になれたら、そんなのはどうだって良い」

彼女はきゅ、と下唇を噛む。

「それに…なれてないから」

「は…?」

彼は呆れ半分で聞き返してから、軽くため息をついた。

「俺が好きな女って知ってるか?色っぽいとか、大人だとか、そーゆー奴じゃねえ。それが『名前』じゃなきゃ意味がねえんだ」

それから彼女の背に腕を回して、その腕に力を入れる。

「ただ、どうしても名前が大人になりたいとか、そーゆーのを考えているんなら、俺が大人にしてやるよ」

「な…っ!」

彼女は無茶苦茶を言う彼を見上げ、そしてフッと口元を緩めた。

「ディーノのばか…、大好き」

「あぁ。俺は、愛してる」

それからどちらともなくキスをした。人通りの多い道のすぐ裏で、深く熱い口づけを。


2人だけの、秘密。




END

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リクエスト下さいました零雛様へ。本当にありがとうございました!とても細かく教えていただき助かりました。ただ男の子寄りの言葉遣いってゆーのがよく分からなくて…これで違うようなら書き直しますのでどんどんおっしゃって下さいね。本当にありがとうございました。
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